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辞める前に何をしておくか。在職中にできる準備の順番

収入があるうちにやっておくと、辞めたあとの1年が変わります。棚卸し・家計・外のつながり・小さく試すの4つを、質問リストと12か月のロードマップつきで並べました。

この記事の要点

  • 準備は辞めてからでは遅い。収入が途切れた状態での準備は、選択の基準が「早く稼げるか」に寄る
  • やることは4つ。経験の棚卸し、家計の可視化、外のつながり、小さく試すこと
  • 棚卸しは実績集めではない。繰り返しやってきた行動を、外の言葉に置き換える作業
  • 「何をするか」を決める前に「何なら続けられるか」を確かめる。ここを飛ばすと合わない道に進みやすい
  • 4つとも、辞めない人にも効く。これは辞めるための準備ではなく、選べるようになるための準備

退職手当の見込みや、在職中にできる活動の範囲は、所属する自治体・府省の規程で異なります。この記事は2026年9月時点の一般的な整理です。可否は必ず所属の規程と人事担当でご確認ください。

辞めたあとの1年がきつくなるかどうかは、辞める前の数か月で決まります。理由は単純で、収入が途切れた状態で始める準備は、どうしても「早く稼げるか」で選ぶことになるからです。

コミュニティの主宰である榊原立城は、3月に退職して4月から動画編集を学び始めました。「稼げる」「未経験でもできる」という言葉で選び、向き不向きを確かめる前に大きい金額を先に払ってしまいます。合わないと分かってからも簡単には引き返せず、そこから1年ほど迷う時期が続きました。本人のインタビューで、この順番を逆にすればよかったと話しています。

在職中にやることは、大きく4つです。順番にも意味があります。

① 経験の棚卸し

実績を集める作業ではありません。繰り返しやってきた行動を、外の言葉に置き換える作業です。

まず、10個書き出す

直近3年の仕事から、印象に残っている場面を10個書き出してください。うまくいった場面でも、大変だった場面でも構いません。次の質問に答える形だと出しやすくなります。

  • 一人で回していた業務は何か。範囲と期間は
  • 誰と誰のあいだを調整したか。何を決めたか
  • 自分で作った、または直した仕組みはあるか
  • 人に頼まれることが多いのは、どんな作業か
  • 面倒がられる作業のうち、自分は平気なものは何か

次に、外の言葉に置き換える

公務員・教員の仕事は、外から見ると何をしていたのか分かりにくい。分かりにくいのは、中身がないからではなく、呼び名が違うからです。

職場での言い方 外での言い方(例)
予算要求・執行 予算策定、コスト管理
関係各課との調整 部門横断のステークホルダー調整
例規・要綱の整備 業務ルールの設計、ドキュメント整備
住民説明会・保護者対応 顧客折衝、クレーム対応、説明責任
担任・学級経営 チームマネジメント、育成、進捗管理
統計・調査の取りまとめ データ集計、レポーティング

置き換えたうえで、自分が苦にせず繰り返してきたものに印をつけてください。得意かどうかより、続けられるかどうかを見ます。ここが職務経歴書の下書きになり、面接で話す材料にもなります(公務員の経験を職務経歴書の言葉に置き換える)。

強みが自分では見えない場合は、強みが見つからないときの探し方の手順を使ってください。

② 家計を数字にする

不安の大半は、金額が分からないことから来ています。次の順で書き出します。

  1. 手取りの月額(額面ではなく手取り)
  2. 賞与を除いた年収(賞与が無くなる前提で暮らせるか)
  3. 固定費(住居・保険・教育・通信)。辞めても下がらないものを分ける
  4. 退職手当の見込み額と、受け取る時期
  5. 何か月分の生活費が手元にあるか

4は所属の規程と人事担当で確認できます。辞めると言わなくても、制度の一般的な確認として聞けます。

5が「6か月」なのか「2か月」なのかで、取れる選択肢はまったく変わります。数字が出ると、辞めるかどうかではなく、いつなら辞められるかという問いに変わります

忘れやすいのは住民税です。前年の所得に対してかかるので、収入が下がった翌年に前年分の請求が来ます。計算の詳細は辞めたあとのお金を、退職手当から先に計算するにまとめました。

棚卸しと家計は一人でも進みます。止まるのはたいてい3つめ、外のつながりです。公務員のキャリアを、同じ立場の人と考える場所があります。

公務員コミュニティに参加する

③ 外のつながりを1つ作る

職場と家庭だけで判断していると、辞める側の話も、残る側の話も、極端な形でしか入ってきません。職場で聞こえるのは「辞めた人の噂」、家庭で言われるのは「安定しているのに」。どちらも判断材料としては足りません。

必要なのは中間の情報です。実際に動いた人が、どういう順番で何をしたのか。うまくいかなかった時期に何をしていたのか。この粒度の話は、当事者からしか出てきません。

相手を選ぶ基準は2つです。

  • 利害がないこと(自分が辞めるかどうかで損得が発生しない相手)
  • うまくいかなかった時期をそのまま話してくれること

在職中の方が気にするのは、身元が分かることです。所属や氏名を出さずに参加できる場を選んでください。 所属が特定される形での発信は、信用失墜行為や秘密を守る義務の問題になり得ます。作り方は職場以外のつながりを、在職中に作るに、相談先の選び方は職場にも家族にも言えないとき、誰に相談するかにまとめました。

このコミュニティも、利害のない相手に話せる場所のひとつとして運営しています。在職中の方は、名前を出さずに質問できます。

④ 小さく試す

最後に、小さく試します。ここでも、適法な範囲を外れないことが前提です(公務員が適法な範囲でできる準備は、どこまでか)。

  • 売らずに、動くものを1つ作ってみる
  • 無報酬の場面で、その役割を実際にやってみる
  • 学んだことを、人に説明してみる
  • 1か月だけ、毎週同じ作業を続けてみる(続くかどうかが分かる)

見るのは出来栄えではありません。やってみて疲れるかどうかです。得意でも疲れるものは続きません。苦手でも苦にならないものは続きます。

町役場の職員だったSHUNさんは、ノーコードツールに触れるところから始めて、Webアプリ開発として独立しました(SHUNさんのインタビュー)。最初から事業の形が見えていたわけではありません。

12か月のロードマップ

4つを順に回すと、おおよそこうなります。忙しい時期は飛ばして構いません。

時期 やること かかる時間の目安
1か月目 家計を書き出す。手取り・固定費・貯蓄 2時間
2か月目 退職手当の見込みを確認する 30分(問い合わせ)
3〜4か月目 場面を10個書き出す。外の言葉に置き換える 3時間
5か月目 職務経歴書の下書きを作る 3時間
6〜7か月目 外の人に話を聞く(2〜3人) 1人1時間
8〜10か月目 小さく試す。続くかどうかを見る 週1〜2時間
11〜12か月目 転職・独立・在職のまま変える、の3つを比べる

この表の途中で「やっぱり続ける」と決まることもあります。 それも準備の成果です。

よくある失敗

  • 資格から入る:用途が決まっていないまま取ると、時間とお金の割に効きません(資格から入ると外れる
  • 情報収集だけで1年が過ぎる:読むのは準備ではありません。書き出す、話す、試すの3つが準備です
  • 家族に直前まで言わない:反対されたときに使える時間が残りません(親に反対されて辞められないとき

準備は、辞めるためだけのものではない

ここまでの4つは、辞めない人にも効きます。自分の経験が外でどう呼ばれるかを知り、家計の数字を把握し、外のつながりがある。その状態で今の職場に残ると、同じ仕事でも見え方が変わります。

辞めるための準備ではなく、選べるようになるための準備です。判断の順番そのものは公務員を辞めたいと思ったら、決める前に確かめる3つのことに、辞めた人の後悔の分かれ目は公務員から転職して後悔する人としない人の違いにまとめました。

よくある質問5選

質問1何年くらい前から準備すればいいですか。

決まった年数はありませんが、棚卸しと家計は今日からできます。実際に外に出た人の多くは、退職の1〜2年前から動いています。

質問2在職中に資格を取っておくべきですか。

用途が決まっていない資格は、時間とお金の割に効きにくいのが実際のところです。先に「何をする人になるか」の見当をつけて、それに必要な場合だけ取るほうが確実です。

質問3家族に言わずに準備してもいいですか。

準備の段階では問題ありませんが、家計に影響が出る決断の前には共有をおすすめします。早めに伝えておいたほうが、反対されたときに時間を使えます。

質問4忙しくて時間が取れません。

4つのうち、棚卸しと家計は合計3時間ほどで下書きができます。まとまった時間を待つより、書き出しから始めてください。

質問5準備したのに辞めなかったら、無駄になりませんか。

なりません。自分の経験が外でどう呼ばれるかを知り、家計を把握し、外に話せる相手がいる状態は、残ると決めたあとの働き方も変えます。

榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ

コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。