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辞めたあとのお金を、退職手当から先に計算する

公務員の退職金は制度上「退職手当」です。支給率の見方、住民税と社会保険の落とし穴、失業給付がない前提、早期退職募集の割増まで、生活できる月数を出す手順でまとめました。

この記事の要点

  • 公務員の「退職金」は制度上は退職手当。給料月額×勤続年数に応じた支給率+調整額で決まる
  • 自己都合か、定年・勧奨かで支給率が変わる。同じ勤続年数でも辞め方で金額が変わる
  • 公務員は原則として雇用保険の対象外。ただし失業者の退職手当に相当する給付の定めがあるのが一般的
  • 辞めた翌年に、前年所得に基づく住民税が来る。ここで家計が崩れやすい
  • 最後に出す数字はひとつ。「決めなくてよい月数」

退職手当の算定、早期退職募集制度の有無と割増率、失業者の退職手当に相当する給付の取り扱いは、所属する自治体・府省の条例と規程で異なります。この記事は2026年9月時点の一般的な整理です。金額は必ず人事担当でご確認ください。

公務員の「退職金」は、制度上は退職手当と呼ばれます。条例や法律で計算の仕方が決まっていて、会社ごとに制度の有無が違う民間の退職金とは前提が違います。

お金の不安は、金額が分からないうちは無限に大きくなります。数字にすると、「生活できないかもしれない」が「あと何か月分足りない」に変わります。後者なら対処できます。

この記事は、その計算を最後まで通すための手順です。

① 退職手当の見込み額を出す

まず人事担当で見込み額を確認してください。おおまかには、次の形で計算されます。

退職時の給料月額 × 勤続年数に応じた支給率 + 調整額

支給率は条例(国家公務員は退職手当法)の別表で決まっています。ここで押さえておくべき点が2つあります。

1|辞め方で率が変わること

自己都合退職と、定年・勧奨(応募認定を含む)では支給率が違い、自己都合のほうが低く設定されているのが一般的です。同じ勤続年数でも、辞め方で金額が変わります。

2|勤続年数の刻み方

年数が上がるほど率が上がる作りになっているので、あと数か月で年数が1つ上がる場合、退職日をずらすだけで金額が変わることがあります。ここは必ず確認してください。

あわせて確認するのは2つです。

  • 振り込みの時期(退職から1〜2か月後になることが多い)
  • 早期退職募集制度の有無(実施している場合、割増が設定されていることがある)

振り込みまでの生活費は、別に用意しておく必要があります。

② 早期退職募集制度を使う場合

自治体・府省によっては、年齢や勤続年数の条件を満たす職員を対象に、退職手当の割増を伴う早期退職の募集を行っていることがあります。

確認するのは次の4つです。

確認すること どこで
実施の有無と時期 庁内の通知、人事担当
対象の条件(年齢・勤続年数・職種) 募集要項
割増の内容 募集要項
申込の期限と、認定の流れ 募集要項、人事担当

使う前提で調べる必要はありません。 制度があるかどうかを知っているだけで、辞める時期の選択肢が変わります。

③ 辞めた後に出ていくお金

見落としが集中するのがここです。

項目 注意点
住民税 前年の所得に対してかかる。辞めた翌年に請求が来る
健康保険 共済の任意継続か国民健康保険。両方を試算して安いほうを選ぶ
国民年金 切り替えが必要。免除・猶予の制度がある
固定費 住居・保険・教育・通信。下げられるものを洗う

いちばん効くのが住民税です。収入が下がった年に、前年の高い所得に基づく額が来ます。年額で見ると数十万円になることもあり、ここを計算に入れていないと、想定より早く貯蓄が減ります

手続きの期限も先に押さえてください。共済の任意継続は退職日から20日以内、国民健康保険と国民年金の切り替えは14日以内が一般的です。手続きの全体像は公務員を辞めると決めてからの手続きを、時系列で並べるにまとめました。

数字を出したあと、「この月数で動いていいのか」を一人で判断するのは難しいところです。同じ立場の公務員・教員と、すでに外に出た人が、実際の数字をもとに考えている場所があります。

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④ 入ってくるお金

公務員は原則として雇用保険の被保険者ではないため、一般的な失業給付はありません。ここを民間と同じだと思っていると、計画が狂います。

ただし、退職手当の制度の中に「失業者の退職手当」に相当する給付が定められているのが一般的です(国家公務員退職手当法第10条、地方も同様の条例規定)。支給には要件と手続きがあるので、所属の規程とハローワークで確認してください。

なお、臨時・非常勤の職員(パートタイムの会計年度任用職員など)は、雇用保険の被保険者になる場合があります。自分の加入状況は、給与明細と人事担当で確認してください。

⑤ 出す数字はひとつ

最後に、次の式で1つの数字を出します。

(貯蓄 + 退職手当の見込み額 - 辞めた翌年の住民税) ÷ (辞めた後の毎月の支出) = 決めなくてよい月数

この月数が、取れる選択肢の幅をそのまま決めます。

月数 取れる動き方
3か月未満 次を決めてから辞める形が現実的
3〜6か月 1つ試して、合わなければ切り替える余地がある
6〜12か月 複数の道を比べながら進められる
12か月以上 立ち上がりに時間がかかる道(独立)も取れる

榊原立城は、退職後の1年を迷いながら過ごしています(インタビュー)。1年かかる前提で組めるかどうかが、この計算の意味です。

数字が足りないときにできること

計算して足りなかったとしても、打つ手はあります。

  1. 辞める時期をずらす:勤続年数が上がる時期、賞与の支給後、住民税の区切り
  2. 固定費を下げる:保険の見直し、通信、住居。辞める前に着手する
  3. 在職中に、次の収入の形を確かめておく辞める前に何をしておくか
  4. 辞めない、という選択も同じ表に置く:数字が足りないなら、それは重要な判断材料です

足りないと分かったこと自体が成果です。 分からないまま辞めるより、はるかに安全な位置にいます。

年金と、60歳以降の収入も同じ表に並べる

退職手当だけを見ていると、判断を誤ることがあります。辞める時期によって、年金と60歳以降の働き方も変わるからです。

確認するのは3つです。

  • ねんきん定期便・ねんきんネットで、いまの加入実績に応じた見込み額を見る
  • 共済の期間と、辞めたあとに国民年金や厚生年金へ切り替わることで見込みがどう変わるか
  • 定年の引き上げによって、自分が何歳まで働ける前提なのか

とくに50代の方は、定年が段階的に引き上げられている途中なので、自分の適用年で前提が変わります。制度の枠組みは定年延長で、50代からの働き方はどう変わるかに、その後の働き方は50代から始めるセカンドキャリアの考え方にまとめました。

家族がいる場合に、先に決めておくこと

世帯で見ると、確認する項目が増えます。配偶者の扶養に入るのか、自分の扶養から外れる人がいるのか。教育費の山がいつ来るのか。ここを曖昧にしたまま数字を出すと、あとで前提が崩れます。

順番としては、次のように進めると揉めにくくなります。

  1. まず自分ひとりで、手取り・固定費・退職手当の見込みを書き出す
  2. 「決めなくてよい月数」を出す
  3. その数字を持って、家族と話す

感情で切り出すより、数字を見せるほうが伝わります。 家族の反対で止まっている場合は、親に反対されて辞められないとき、伝える順番を変えるも読んでください。

数字は、辞めない判断にも使える

この計算は、辞めるためのものではありません。続ける場合の見通しを立てるためにも同じ数字を使います。

  • このまま勤めた場合、定年までにいくら入るのか
  • 60歳以降、収入がどう変わるのか
  • 途中で働き方を変える場合、何歳がいちばん動きやすいか

出してみると、「いま辞めるより、あと3年は残したほうが条件がいい」と分かることもあります。それも判断です。数字を出さないまま迷い続けるより、はるかに前に進んでいます。

将来の不安が漠然としている場合は将来が不安なとき、不安を3つに分けるを、辞めたあとの設計は公務員を辞めた後、何をするかを読んでください。

よくある質問5選

質問1退職手当はいつ、いくら入りますか。

勤続年数と退職理由で計算され、振り込みは退職から1〜2か月後になることが多いようです。金額は人事担当で見込みを確認できます。辞めると伝えなくても、制度の確認として聞けます。

質問2早期退職募集制度を使うと増えますか。

制度がある場合、割増が設定されていることがあります。実施の有無と条件は所属によって異なるため、募集要項で確認してください。

質問3失業給付は受けられますか。

公務員は原則として雇用保険の被保険者ではないため、一般的な失業給付の対象外です。ただし退職手当の制度の中に、失業者の退職手当に相当する給付が定められているのが一般的です。

質問4自己都合と定年で、どれくらい変わりますか。

支給率が条例の別表で定められており、自己都合のほうが低く設定されているのが一般的です。具体的な率は所属の条例で確認してください。

質問5住宅ローンが残っていても辞められますか。

返済が続く前提で「決めなくてよい月数」を計算してください。転職先が決まっていない状態では借り換えや新規の借入が難しくなる点も、先に確認しておくと安全です。

榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ

コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。