公務員の経験を職務経歴書の言葉に置き換える
予算・調整・法令の運用は、民間の職務経歴書に書ける形があります。置き換えの対応表、書く順番、規模の数字の出し方、書いてはいけないこと、添削の観点までまとめました。
この記事の要点
- 部署名と業務名を並べても伝わらない。何を決めて、何人を動かし、何が変わったかを書く
- 行政特有の言葉は民間の言葉に置き換える。対応表を使う
- 数字は成果でなくてよい。規模・件数・期間で十分に伝わる
- 異動の多さは弱点ではなく、立ち上がりの早さとして書ける
- 職務上知り得た情報は書かない。守秘義務は退職後も続く
職務上知り得た秘密を守る義務は、退職後も続きます(国家公務員法第100条、地方公務員法第34条)。個人情報や未公表の情報は、職務経歴書にも面接にも出さないでください。
職務経歴書でいちばん多い失敗は、部署名と業務名を並べて終わることです。「総務課 庶務担当」「学校教育課 就学事務」。読む側には、何をしていた人なのかが分かりません。
行政の中では、部署名を言えば仕事の中身が伝わります。外では伝わりません。同じ情報量にするために、言葉を足す必要があるというのがこの作業です。
書く順番
- 要約(3〜4行):何ができる人かを最初に書く
- 職務経歴(新しい順):所属、期間、役割、担当業務
- 各業務について:決めたこと・動かした範囲・変わったこと
- 活かせる経験:応募先の仕事に重なる部分
- 資格・研修
3が中心です。ここだけ丁寧に書けば、他は短くて構いません。
1の要約も効きます。読む側は最初の数行で「どの職種の人か」を判断します。**「地方公務員として12年」ではなく、「制度に基づく給付業務を12年。年間◯件の審査と、関係機関との調整を担当」**のように、職種として読める形にしてください。
置き換えの対応表
| 行政の言葉 | 民間の言葉 |
|---|---|
| 予算要求・執行管理 | 予算策定、コスト管理、執行のモニタリング |
| 例規・要綱の整備 | 業務ルールの設計、ドキュメント整備 |
| 関係各課との協議 | 部門横断の調整、合意形成 |
| 委託業者の選定・監督 | ベンダー選定、外注管理 |
| 住民説明会 | ステークホルダー向け説明、合意形成 |
| 窓口対応 | 顧客対応、一次対応、クレーム対応 |
| 統計調査の取りまとめ | データ集計、レポーティング |
| 制度改正への対応 | 法改正対応、業務プロセスの改定 |
| 補助金の審査 | 申請審査、与信に近い判断業務 |
| 議会対応・答弁作成 | 経営層向けの資料作成、想定問答の準備 |
教員の方は教員の経験を、外の仕事の言葉に言い換えるの表を使ってください。
置き換えるときの注意がひとつあります。過度に民間の言葉に寄せると、嘘っぽくなります。 「DX推進」「マネジメント」のような大きい言葉より、実際にやったことを具体的に書くほうが信用されます。
数字は、成果でなくていい
売上や利益の数字がなくても、規模を示す数字は必ずあります。
- 担当した予算の規模(◯千万円)
- 処理した件数(年間◯件)
- 対象人数(◯世帯、◯人)
- 期間(◯年、◯か月で立ち上げ)
- 関わった部署・事業者の数
- 短縮した時間(◯時間/月)
「正確にやっていた」を、数字で見える形に置き換えるのがこの作業です。数字が思い出せない場合は、概算で構いません。面接で聞かれたときに説明できる範囲にしておいてください。
書いた職務経歴書が外の人にどう読まれるかは、中にいると分かりません。公務員から民間・独立へ動いた人が読み合っている場所があります。
公務員コミュニティに参加する異動の多さは、弱点ではない
「3年ごとに全然違う仕事をしていて、専門性がない」。これはよく聞く悩みです。ただ、書き方を変えると強みになります。
- 短期間で新しい業務を覚えて、回せるようになった経験
- 複数の分野を横断して、制度の共通点が見えている
- 引き継ぎを受ける側・渡す側の両方を経験している
民間でも、部署異動や事業の立ち上げは頻繁にあります。「新しい環境で早く立ち上がれる」ことは、そのまま評価の対象です。 一貫性がないことを詫びる書き方だけは避けてください。
書いてはいけないこと
秘密を守る義務は、辞めたあとも続きます(国家公務員法第100条、地方公務員法第34条)。個人が特定できる情報、未公表の計画、内部資料の内容は書かないでください。規模や役割は、これらに触れずに書けます。
また、辞めた理由として組織や上司への不満を書かないこと。読む側が受け取るのは、不満の中身ではなく「この人は前職の不満を書く人だ」という印象です。
同じ理由で、制度や政策への批判も書かないほうが安全です。 主張として正しくても、採用の場面では扱いにくい情報になります。
添削は、外の人に頼む
書き上げたら、行政の外にいる人に読んでもらってください。見てもらう観点は3つです。
- 職種として読めるか:最初の3行で何ができる人か分かるか
- 具体があるか:数字と、決めた範囲が書かれているか
- 専門用語が残っていないか:例規、要綱、起案、専決。外では通じません
「分かりにくい」と言われた箇所は、たいてい説明を省いている箇所です。 中では省略できる前提が、外では共有されていません。
通用しないと思ったら
書いてみて「何もない」と感じたら、それは経験がないのではなく、言い換えが足りていないことがほとんどです(公務員は民間で通用しないのか)。
強みが自分では見えない場合は、強みが見つからないときの探し方の手順で、繰り返してきた行動から探してください。民間との働き方の違いは地方公務員から民間に移ると、何が変わるかにまとめています。
職種別に、厚く書く部分を変える
同じ職務経歴書でも、応募先によって厚くする部分が変わります。全部を均等に書くと、どれも薄くなります。
- 業務改善・バックオフィス:例規や要綱の整備、手順を作った経験、誤りを減らした工夫
- 企画・進行管理:関係者の調整、期限の管理、複数部署をまたぐ案件
- 審査・コンプライアンス:制度に基づく判断、根拠の確認、記録の残し方
- 顧客対応・サポート:窓口での対応件数、難しい場面の対処、説明の工夫
- 公共分野の営業・導入支援:行政の意思決定の流れを理解していること
応募先が3件あれば、職務経歴書も3通りになります。 土台は同じで、厚くする部分を入れ替えるだけです。
面接で深掘りされる部分
書類が通ると、書いた内容を掘られます。準備しておくのは3つです。
1|数字の根拠
「年間◯件」と書いたなら、どう数えたかを言えるようにしておく。概算なら「概算で」と伝えて構いません。
2|自分の役割の範囲
「調整しました」の中身を聞かれます。誰と誰のあいだで、何が対立していて、どう決めたか。経緯を1分で話せると強い。
3|うまくいかなかった経験
必ず聞かれます。失敗を隠すより、そこから何を変えたかを話すほうが評価されます。
書き終えたら、声に出して読む
文章として整っていても、話せない職務経歴書は面接で崩れます。書き終えたら、要約の部分を声に出して読んでみてください。
読みにくい、説明が長い、自分でも何を言っているか分からない。そう感じた部分は、面接でも同じことが起きます。話せる言葉に直しておくと、書類と面接が地続きになります。
まとめ
- 部署名ではなく、決めたこと・動かした範囲・変わったことを書く
- 対応表で行政の言葉を置き換える。ただし大きい言葉に逃げない
- 数字は成果でなく規模でよい
- 異動の多さは、立ち上がりの早さとして書く
- 守秘義務は退職後も続く。個人情報と未公表情報は書かない
- 添削は、行政の外にいる人に頼む
よくある質問5選
質問1成果の数字が出せません。
売上のような数字でなくて構いません。担当した件数、対象人数、予算規模、短縮した時間など、規模が分かる数字で十分です。
質問2異動が多く、一貫性がありません。
異動の多さは、立ち上がりの早さとして書けます。短期間で業務を覚えて回した経験として整理してください。
質問3何枚くらい書けばいいですか。
A4で2枚程度が目安です。直近と、応募先に関係する経験を厚く書きます。
質問4志望動機はどう書けばいいですか。
前の職場の不満ではなく、応募先の仕事のどの部分に自分の経験が重なるかを書きます。1つ具体があれば足ります。
質問5添削は誰に頼めばいいですか。
できれば、行政の外にいる人に読んでもらってください。内部の人には伝わる言葉が、外では通じないことがあります。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。