強みが見つからないときの探し方
目立つ実績がないから強みがない、と考えると行き止まりになります。繰り返してきた行動から探す3ステップ、人に聞く質問、見つけた強みの使い方までまとめました。
この記事の要点
- 強みは成果の大きさではなく、繰り返している行動に出る
- 探すときの問いは「何ができるか」ではなく「何をしていると疲れないか」
- 自分では当たり前すぎて気づけない。人に聞く工程を入れる
- 短所の裏返しにも手がかりがある
- 見つかった強みは、職種を選ぶときの条件になる
自己分析をしようとすると、たいていここで止まります。「表彰もされていないし、特別な実績もない」。
強みは、成果の大きさではありません。 繰り返している行動に出ます。だから探す場所を変えると見つかります。この記事では、その探し方を3つの手順で書きます。
問いを変える
「何ができるか」で探すと、資格と実績しか出てきません。次の問いに変えてください。
- 何をしているときに、疲れないか
- 職場でよく頼まれることは何か
- 他の人が面倒がる作業のうち、自分は平気なものは何か
- 昔から変わらずやっていることは何か
- 誰かに「助かった」と言われたのは、どんな場面か
コミュニティの主宰である榊原立城の場合、それは「一人ひとりの良いところを見つけて、そこに合った役割を渡すこと」でした。学級でも、特別支援学級でも、いまのコーチングでも、同じことをしています(インタビュー)。職種が変わっても変わらなかった行動が、その人の強みです。
① 行動を集める
直近3年の仕事から、印象に残っている場面を10個書き出します。うまくいった場面でも、大変だった場面でも構いません。
書き方は、次の形にそろえると比べやすくなります。
【場面】いつ、どこで、何が起きたか
【やったこと】自分が具体的に何をしたか
【結果】どうなったか
【感覚】そのとき、しんどかったか/苦にならなかったか
4つめの「感覚」を必ず書いてください。 ここが強みの手がかりになります。結果が良くても、しんどかったものは続きません。
② 共通点を探す
10個を並べて、繰り返し出てくる動詞に印をつけます。整える、調べる、つなぐ、決める、教える、支える、作る、直す。
動詞で見ると、職種をまたいで共通する部分が出てきます。 「保育の窓口で説明した」と「新任に手順を教えた」は、業務としては別ですが、動詞は同じ「伝える」です。
3つ以上の場面に出てくる動詞があれば、それが軸です。
自分の当たり前は、自分では見えません。同じ立場の人や、外に出た人に話すと、10分で出てくることがあります。
公務員コミュニティに参加する③ 人に聞く
自分では当たり前すぎて気づけない部分があります。同僚、家族、以前の同僚に聞いてください。聞きにくければ、職場の外の人でも構いません。
質問は、次の3つが答えやすいようです。
- 私に何かを頼むとしたら、どんなことを頼みますか
- 私が助かったと感じたことがあれば教えてください
- 私がやらないほうがいいと思う仕事は何ですか
3つめも重要です。向いていないことが分かると、選択肢が絞れます。 強みの裏側にある苦手を知っておくと、合わない職種を避けられます。
短所の裏返しを見る
出てくるのが短所ばかり、という人もいます。その場合は裏返してください。
| 短所として言われること | 裏返し |
|---|---|
| 慎重すぎる | 確認を欠かさない。誤りが少ない |
| 気を遣いすぎる | 相手の状態に気づける |
| 融通が利かない | ルールを守り切る。線を引ける |
| 細かい | 品質を落とさない |
| 決めるのが遅い | 情報を集めてから判断する |
どちらの言い方も同じ行動を指しています。 職場では短所に見えたものが、別の職種では必要とされることがあります。
見つかった強みは、条件として使う
強みが分かると、職種を選ぶときの条件になります。
| 強み(動詞) | 向きやすい仕事の形 |
|---|---|
| つなぐ・調整する | 進行管理、渉外、コミュニティ運営 |
| 整える・仕組みにする | 業務改善、バックオフィス、運用設計 |
| 教える・支える | 研修、サポート、対人支援 |
| 作る・形にする | 制作、開発、企画 |
| 調べる・確かめる | 調査、分析、審査 |
ここが決まっていないまま資格や講座から入ると、外れます(資格から入ると外れる。用途を決めてから選ぶ)。
強みは、職務経歴書にそのまま書ける
見つけた動詞は、職務経歴書の要約に使えます。
制度に基づく業務を12年。関係する課と事業者のあいだを調整して、進め方を決めていく部分を主に担当してきました。
「調整」という動詞と、実際の場面をセットにすると、読む側に像が浮かびます。書き方は公務員の経験を職務経歴書の言葉に置き換えるに、教員の方は教員の経験を、外の仕事の言葉に言い換えるにまとめました。
出てきた強みを、試して確かめる
書き出して終わりにすると、強みは仮説のままです。実際に使ってみて、疲れ方を見るところまでやると確かめられます。
試し方は、いまの職場でできます。
- その動詞が中心になる仕事を、自分から1つ引き受けてみる
- 1か月続けてみて、終わったあとの疲れ方を見る
- 周囲の反応を見る(頼まれる回数が増えるか)
「得意そう」と「やっても苦にならない」は別です。 得意でも消耗するものは、仕事にすると続きません。逆に、平凡だと思っていた作業が、他の人には負担だったと分かることもあります。
強みが見つからない、と感じる理由
それでも見つからない、という場合、たいてい次のどれかです。
1|基準が高すぎること
「人より抜きん出ていること」を探していると、何も出てきません。人より少し苦にならない程度で十分です。
2|体調が落ちていること
疲れているときは、自分の何もかもが平凡に見えます。この状態での自己分析は当てになりません(働きすぎのサインを、自分でどう見分けるか)。
3|一人でやっていること
自分の当たり前は、自分では見えません。人に聞く工程を飛ばすと、材料が半分のままになります。
見つかったあと、どう使うか
強みが言葉になったら、使い道は3つあります。
- 職種を選ぶ条件にする:求人を「できそうか」ではなく「自分の型に合うか」で見る
- 職務経歴書の要約に使う:動詞と場面をセットで書く
- いまの仕事の組み立てに使う:その動詞が中心になる担当を取りにいく
3つめは、残ると決めた場合にも効きます。同じ職場でも、自分の強みが出る仕事を増やせると、働き方は変わります(やりがいを感じないとき、何を見直すか)。
定期的に見直す
強みは、一度書いたら終わりではありません。担当が変わり、経験が増えると、出てくる動詞も変わります。
1年に1回、同じ手順でやり直すと、自分の変化が見えます。前に書いたものと比べて、増えた経験、減った関心、変わらない部分。変わらない部分が、いちばん強い軸です。
異動のたびに書き直す形にしておくと、職務経歴書の更新もそのまま進みます。
まとめ
- 問いを「何ができるか」から「何をしていると疲れないか」に変える
- 直近3年の場面を10個書き、繰り返す動詞を見つける
- 立場の違う3人に聞いて、自分では見えない部分を埋める
- 短所の裏返しにも手がかりがある
- 見つけた強みは、職種を選ぶ条件と、職務経歴書の要約に使う
在職中の準備の全体像は辞める前に何をしておくかにまとめています。
よくある質問5選
質問1実績がないのですが、それでも強みは見つかりますか。
見つかります。表彰や数字の成果ではなく、周囲から頼まれることや、苦にせず続けてきたことのほうが手がかりになります。
質問2診断ツールは使ったほうがいいですか。
言葉のきっかけとしては使えます。ただし結果をそのまま自分の結論にせず、実際の行動と照らして確かめてください。
質問3短所しか出てきません。
短所の裏返しに手がかりがあることが多いです。「慎重すぎる」は確認を欠かさないこと、「気を遣いすぎる」は相手の状態に気づけることでもあります。
質問4誰に聞けばいいですか。
いまの同僚、前の職場の人、家族。立場が違う3人に聞くと、共通して出てくるものが見えます。
質問5強みが分かったら、何が変わりますか。
職種を選ぶときの条件になります。求人を「できそうか」ではなく「自分の型に合うか」で見られるようになります。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。