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町役場 職員(7年)ノーコードでWebアプリ開発として独立独立から3年目

町役場7年からノーコードで独立。副業できない立場で、どう試したか

銀行員を経て町役場に勤めたSHUNさん。副業の許可が下りない中で、働き方のほうを変えて1年間試してから独立するまでを聞きました。

この記事の要点

  • きっかけは、職員全員で使っていたツールが年約160万円のサブスク型に変わり、代替を自分で作ることになったこと
  • 副業の許可は人事課長と何度話しても下りず、パートタイムの会計年度任用職員に切り替えて1年試してから独立した
  • 営業が苦手なので、最初の仕事はスクール経由の紹介。いまも下請け中心でポートフォリオが作れないのが悩み
  • IT企業への転職も検討したが、入っても「1から10まで」を経験できるとは限らないと考えて直接独立した
  • 公文書や契約書を細かくチェックする癖など、役場で身についた感覚がいまの開発の仕事に効いている

コミュニティのオンラインイベントとして開催した、キャリアインタビューの第2回です。ゲストは元町役場職員のSHUNさん、聞き手は主宰の榊原立城。当日の内容から抜粋してお届けします。

銀行員から町役場へ。担当は自治会・防犯・システム

― まずは簡単に自己紹介をお願いします。

SHUNと申します。大学を卒業してから銀行員と公務員を経て、いまは主にBubbleというノーコードツールを使って、Webアプリの開発をしています。メインはBubbleでの開発ですが、今後はAI開発も進めていこうと考えているところです。

― 公務員時代は、どんなお仕事をされていましたか。

町役場の職員、地方公務員でした。担当した業務は大きく分けると、自治会(いわゆる町内会)の担当、防犯の担当、それとシステムの担当をメインにやってきました。それを担当しながら、サブという役割で防災・企画・広報にも携わっていました。

あとは、あとで触れることになると思うんですけれど、会計年度任用職員という立場になったことがあって、そのときは国民健康保険の担当をしていました。

― 期間はどのくらいですか。

役場には、正職員が6年で、会計年度任用職員が1年。トータル7年ですね。

年160万円のサブスク化から、ノーコードに出会った

― 転職や独立を考えるようになったきっかけは何ですか。

結論から言うと、せっかくBubbleというものを扱えるようになったんだから使っていきたいし、Bubbleで作業するのが楽しいと思えたから、というところです。

Bubbleに触れるに至った流れをお話しすると、システムの担当をしていたときの出来事なんですけれど。当時、職員全員で使っていたツールがあって、それは過去に購入してずっと使い続けていたものだったんですね。それが「今後も使い続ける場合はサブスク型に切り替えなければならない」という案内が届いて、対応を考える必要が出てきたんです。

― それまではランニングコストがかからなかったものが、ということですね。

そうです。買い切りのものをずっと使い続けていたのでランニングコストは一切かかっていなかったんですけれど、今後は確かだいたい160万円ぐらいずつ毎年かかっていくようになってしまう、という内容でした。

担当の私としては、ずっと使っていたツールで、上の人たちも含めて使い勝手が浸透していたので、サブスク型に切り替えてそのまま使い続けたかったんです。でも財政部局から「そのランニングコストは無理だ」と言われて、代替案を探さないといけなくなりました。

― そこで自分たちで作る、という案が出たと。

代替案のひとつとして、自分たちで作るという案を出したんですよ。それを考えるにあたっていろいろ調べていると、ノーコードツールというものがあると知って。プログラミングができなくても簡単にホームページやアプリを作れる、と書いてあったんですね。

それなら自分たちでもできるんじゃないかというところで、ノーコードツールのひとつであるBubbleに出会うことになりました。自分で勉強して、サブスク型に切り替えないといけないと言われていたツールを、自分で作れるようになったんです。

せっかくこういうものが作れるようになったんだから、このスキルを使っていきたい。そう思うようになったのがきっかけですね。

― 作っているときは、楽しかったんですか。

もともと私は、工作とかものづくりはどちらかというと苦手なほうだという意識を持っていたんです。でもBubbleに関しては、自分でサイトやアプリを作っていく過程が、なんだか分からないんですけれど楽しいと思えて。

これだったらずっとできるというか、楽しく仕事できるって最高やん、と思ってやり始めたのがスタートですかね。

不安は「営業」と「技術」。IT企業への転職も考えた

― 退職を決断するまでに、迷いや不安はありましたか。

私はあまり話すのが得意ではなくて、銀行を辞めた理由のひとつもそれなんですけれど、営業が苦手だというのは当初から自分で分かっていました。なので、仕事が取れるのかどうかというのが一番の不安としてありました。

もうひとつは技術です。Bubbleが使えるようになったとはいえ、どんなシステムでも作れます、というほどのものでもなかったので、技術的に通用するものなのかという不安がありました。

― 全く違う業界ですもんね。

そうなんです。ずっと役場にいたので、いずれ独立するとしても、一回IT会社・システム会社に転職して、その業界のことを知ってからのほうがいいのかな、と悩んだこともありました。

― 実際には、直接独立されたんですよね。何が決め手でしたか。

これもネットで調べている限りの情報だったんですけれど、1から10までシステムができ上がるまでの過程を、会社員になったとしても経験できるかというと、そうじゃなさそうな情報が出てきまして。

たとえば、でき上がったシステムの保守の部分ばかり担当するとか、ちゃんと動くかどうかのテストばかりするとか。そういう担当になれば、どうやって最初に作られるのか、その過程は結局知ることがないのかなと思って。それなら、あんまり役に立たないのかなと思ってしまって、転職しようとはならなかったですね。

副業が無理なら、働き方のほうを変える

― 実際に退職に向けて、どんな準備をされましたか。

先ほど何度かお話しした、会計年度任用職員というものになったんですね。

いきなり個人事業主一本に切り替えるのは怖かったので、本当は正職員を続けながら副業ができればよかったんです。でも公務員なので、もちろん許可を取らないと副業はできなくて。人事課長と何度も話をしたことはあるんですけれど、取り付く島もないという感じだったので、副業の線は諦めました。

― そこで、別のルートを取ったと。

会計年度任用職員にはフルタイム型とパートタイム型の2種類があって、パートタイム型、いわゆる短時間勤務のイメージのものにすると、公務員の副業規制の対象外になるんですよ。副業ができるんです。

なのでこちらに切り替えて、給料をもらいつつBubbleで仕事を試してみる、という形を作りました。これを1年続けて、「全くBubbleで仕事がないわけじゃない、できないわけじゃない」というのが分かったので、そこで個人事業主一本に切り替えて、いま2年目になっています。

― 勤務時間はどのくらいだったんですか。

自治体の募集内容次第だと思うんですけれど、私の場合は週5出勤で、9時から15時45分まででしたね。夕方からが自分の仕事という感じでした。

もともと働いていた職場でやっていたことなので、人間関係ができ上がっている状態でやれたというのは、メリットかなと思います。

なお、会計年度任用職員の勤務形態や兼業の扱いは自治体ごとに定めが異なります。同じ形が取れるかどうかは、必ずご自身の所属で確認してください。

最初の仕事はスクール経由。いまの悩みは実績づくり

― 営業が不安だとおっしゃっていましたが、最初の仕事はどう取ったんですか。

Bubbleを勉強したときにオンラインスクールで学んだんですけれど、そのスクールのプランに「しっかり卒業できて、仕事ができる状態だとスクール側に認めてもらえたら、仕事を紹介する」というものが付いていたんですよ。

なので最初はそこからいただいたお仕事をさせていただいて、継続していまもお仕事をさせていただいています。一番最初のハードルとしては、営業らしい営業はせずにやったという感じですね。

― それが実績になって、次につながっていく感じですか。

そこがですね、なかなかできなくて。直接仕事を受けて「実績にしていいですか」ということは言えないので。

下請け的な働き方をすると自分のポートフォリオができない、「いまこういうものを作りました」というものがなかなかできない、というところはいまも悩んでいるところですね。

辞めてよかったこと、困ったこと

― 実際に退職してみて、よかったことと困ったことをそれぞれ教えてください。

よかったことで言うと、自由に物事を決められること。やったことが全部意味のあるものになるというか、そのまま自分に返ってくるところがいいなと思っています。

役場だと、法律的な縛りがあって、何か新しいことをしようとしても結局何もできず例年通りにするしかない、ということがありました。いまは自由にできて、めちゃめちゃ快適です。

― 困ったことは。

一般的によく言われる「毎月の安定的な収入がなくなる」というところはありますけれど、あんまり困ったということはなくて、後悔もしていないですね。

強いて言うなら、仕事とは全然関係ない部分なんですけれど、結婚できるかなというのは思いました。公務員という属性を捨てて不安定な個人事業主になると、結婚するにあたって難易度は上がるんちゃうかな、と。

― そこは、どうなったんですか。

ありがたいことに、いまの妻がおりまして。会計年度任用職員をしているときに出会った方で、「もうすぐ公務員は辞めて個人事業主になろうと思ってんねん」ということを話したうえでお付き合いしてくださって、そのまま結婚してくれた方なので、めちゃめちゃ感謝しています。

役場で身についた「細かさ」が効いている

― 公務員時代の経験や強みは、いまの仕事にどう活きていますか。

これが一番、質問の中で何が言えるかなと悩んだところなんですけれど。細かいところに気をつけて進めることが癖づいている、というのは活きているところかなと思っています。

アプリ開発をしていると、こちらが想定していない変わった操作をユーザーがしたときに、ちゃんと対応できているかを考えておかないといけないんですよね。たとえば一般ユーザーが管理者画面のURLを知ってしまって直接入ろうとしたときに、入れない形になっているか、とか。そういうところに頭を向けておかないといけません。

あとは契約書を巻くときに、文言や言い回しを細かくチェックするようになっているのは、行政で培った感覚かなと思います。

― 公文書の書き方は、かなり細かいですよね。

公文書は形式が大事というところがあって。小学校のときに原稿用紙で「文章の最初は一マス空けよ」と言われるじゃないですか。ああいうのが公文書にはめちゃめちゃ細かくあって、こういうケースのときは4文字分空けないといけないよね、とか。そういうチェックも含めて、細かいところを見るようになってしまっているというのはありますね。

契約書も、初めて見るとなると「うっ」となってしまうと思うんですけれど、そこまでの抵抗感なく巻くことはできました。

― 「元公務員」であること自体が、信頼につながることはありますか。

客観的な印象としては、なんかあるとは思うんです。ただ、実際にクライアントさんとやり取りをしていて「そこを見てもらえたのかな」と実感するところは、あんまりないというのが正直なところではあります。

Xのプロフィールなどに「公務員」と書いておくのは、もしかしたらプラスに働くかもしれないなとは思って、ずっと残していますね。

現役の公務員の方へ

― 最後に、転職や独立を考えている現役の方へメッセージをお願いします。

私の周りで転職していった人たちは、全員が別の役所へ転職したんですね。理由を直接聞いたわけではないんですけれど、「自分にはスキルがないから役所以外で働けない」と思って、そもそも役所以外を選択肢に入れていないケースが一定数あるんじゃないかなと思っています。

それはもったいないので、こういうコミュニティなどで情報を得て、視野を広げてほしいなと思います。

スキルの問題は、いまはYouTubeなどで無料で学べたりするので、とりあえずかじってみるというのがやりやすい時代かなと思います。そういうものであれば当然副業にはならないのでノーリスクでできますし、最終的に転職や独立をしないという決断をしたとしても、学んで損はないと思うので、やらない理由はないかなと思います。

― 動くのが怖い、という方も多いと思います。

私もそうなったんですけれど、そういう方に対しては……役場にいた人間なので役所の方向けの言い方になってしまうんですけれど。

役所って、異動すると業務内容が変わりすぎて「転職したみたいだよね」という話がよくあるんですよね。その異動を経験しているんだったら、転職や独立も同じようなものだと考えたら、少しは踏み出しやすくなるのかなと思います。

無理に転職や独立をしろというわけではないんですけれど、そういうものにハードルをめちゃめちゃ高く考えてしまっている場合は、こういう考え方をするのもありかなと思います。

― 最後に、制度の話も伺えますか。

去年、人事院——国の人事部みたいなところですね——が副業の承認基準を見直して、今年度から適用しているというニュースを見たんですよ。詳細まで把握できてはいないんですけれど、国家公務員の副業規制が以前よりかなり緩和されたらしくて。

国家公務員がそういう方向に動いているのであれば、地方公務員もおそらく同じ流れに乗っていくことになると思うので、近い将来、学校の先生にしろ役所の職員にしろ、幅広い職種で「副業で試してから独立する」ということができるようになると思います。私が一度断念した、正職員のまま副業で試すというのができるようになるかもしれない。羨ましいなと思ってそのニュースを見ていました。

※ 副業・兼業の承認基準は所属や職種によって扱いが異なり、運用も変わります。実際に検討される際は、必ず最新の規程とご自身の所属のルールをご確認ください。