公務員を辞めたいと思ったら、決める前に確かめる3つのこと
辞めたい気持ちが出てきたときに、勢いで決めるのでも我慢を続けるのでもない順番をまとめました。体調・お金・選択肢の3つを、決断より先に確かめます。計算の手順と1年のロードマップつき。
この記事の要点
- 辞めたい気持ちは「結論」ではなく「合図」。先に決めると、選択肢が減った状態で決めることになる
- 「辞めたい」には4つの種類があり、種類ごとに効く手がまったく違う
- 確かめる順番は、①体調 ②お金 ③選択肢。この順番を入れ替えると判断を誤りやすい
- 在職中にできることは思っているより多い。辞めてから始めると、収入が途切れた状態で準備することになる
- 辞める・辞めないの前に「選べる状態」を作る。選べるようになってから決めても遅くない
制度(退職手当、職務専念義務や信用失墜行為の禁止の取り扱いなど)は、所属する自治体・府省の法令と規程で異なります。この記事は2026年9月時点の一般的な整理です。適用は所属の規程と人事担当でご確認ください。体調に不安があるときは医療機関にご相談ください。
「辞めたい」と検索した日のことを、あとから思い出せる人はあまりいません。窓口で長い苦情を受けた日でも、締切に追われた日でもなく、何もなかった平日の帰り道に、ふと出てくる。そういう出方をします。
この記事は、その気持ちを否定も肯定もしません。辞めるのが正解だとも、続けるのが正解だとも書きません。書くのは順番です。決める前に確かめておくと、あとで「あのとき選べなかった」と思わずに済むものが3つあります。
読み終えたときに残ってほしいのは、決断ではなく、次の1週間でやることの一覧です。
「辞めたい」は4つに分かれる
辞めたいと思ったときに多くの人がやってしまうのは、その気持ちをそのまま結論として扱うことです。辞めるか、辞めないか。二択に置いた瞬間に、あいだにある手が見えなくなります。
同じ「辞めたい」でも、中身はこれだけ違います。
| 種類 | よく出てくる言い方 | 効きやすい手 |
|---|---|---|
| ① 量の限界 | 時間がない、休めない、家に帰れない | 担当の組み替え、業務量の記録、異動希望 |
| ② 裁量の不足 | 決まったことをやるだけ、意見が通らない | 組織の中では変えにくい。働き方そのものの検討 |
| ③ 先が見えない | この先20年これを続ける自分が想像できない | 時間をかけて選択肢を作る |
| ④ 心身の不調 | 眠れない、朝に動けない、涙が出る | 受診と休養。キャリアの判断は後回し |
①は職場の中で変わることがあります。②は制度の作りに由来するので、同じ組織にいる限り完全には消えません。③は急ぐ話ではなく、材料をそろえる話です。そして④は、キャリアの話ではなく体の話です。
自分がどれなのかを分けないまま辞めると、辞めた先で同じ状態に戻ることがあります。 ①だと思って辞めたら実は②だった、という人もいれば、④なのに③だと思い込んで大きな決断をしてしまう人もいます。
ここから先は順番の話です。体調、お金、選択肢。この順に確かめます。
① 体調(いちばん先に確かめる)
眠れているか。休みの日に回復しているか。食事が普通にとれているか。ここが崩れているときは、キャリアの判断をしないでください。判断力そのものが落ちている状態で決めたことは、回復してから見ると別の結論になることが多いからです。
次の5つは、自分で確かめられます。
- 寝つけない、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める状態が続いている
- 食欲がない、味がしない、または極端に食べてしまう
- 休日に休んでも、月曜に疲れが残っている
- 同じことを何度も考えて、決められない
- 職場のことを考えると体に反応が出る(動悸、腹痛、頭痛)
ひとつでも続いているなら、まず医療機関に相談してください。受診の基準を自分で上げないこと。 「これくらいで行っていいのか」と考えている時点で、相談していい状態です。
休職という選択肢は、辞めるための前段階ではありません。判断できる状態に戻すための時間です。身分を残したまま離れられるという点で、退職とは決定的に違います。見分け方は働きすぎのサインを、自分でどう見分けるかに、教員の方は教員を辞めたくなったとき、最初にやることの順番に書きました。
体調に問題がない、あるいは回復してきた。そこで次に進みます。
② お金(不安の正体を数字にする)
辞めることへの不安の大半は、金額が分からないことから来ています。「生活できないかもしれない」を「あと◯万円足りない」に変えると、対処できる問題になります。
出すのは次の4つです。
| 確かめること | 見るところ | 注意 |
|---|---|---|
| 手取りの月額 | 給与明細 | 額面ではなく手取りで見る |
| 賞与を除いた年収 | 手取り×12 | 賞与が無くなる前提で暮らせるか |
| 退職手当の見込み額 | 退職手当条例・規程、人事担当 | 自己都合と定年・勧奨で支給率が違う |
| 固定費 | 住居・保険・教育・通信 | 辞めても下がらないものを分ける |
そのうえで、次の式を計算します。
(貯蓄 + 退職手当の見込み額) ÷ (辞めた後の毎月の支出) = 決めなくてよい月数
この数字が、取れる選択肢の幅をそのまま決めます。6か月あれば、合わなかったときにもう一度選び直せます。2か月なら、最初に選んだ1つで当てにいくしかありません。
見落としやすいものを3つ挙げておきます。
- 住民税:前年の所得に対してかかります。収入が下がった翌年に、前年分の請求が来ます
- 失業給付:公務員は原則として雇用保険の被保険者ではないため、一般的な失業給付はありません(臨時・非常勤の職員は例外があります)
- 退職手当の振込時期:退職から1〜2か月後になることが多く、その間の生活費は別に要ります
計算の手順は辞めたあとのお金を、退職手当から先に計算するに詳しく書きました。
数字を出したあと、「自分の場合はこれで足りているのか」で止まる人が多いところです。同じ立場の公務員・教員と、すでに外に出た人が、実際の数字をもとに考えている場所があります。
公務員コミュニティに参加する③ 選択肢(ここだけは一人では埋まらない)
体調とお金を確かめたうえで、最後に選択肢です。ここでいう選択肢は、転職サイトの求人ではありません。自分の経験が、外のどんな言葉に置き換わるのかです。
公務員・教員の仕事は、外から見ると何をしていたのかが分かりにくい。予算をつくる、関係者を調整する、法令に沿って運用する、住民や保護者に説明する。これらは民間にも同じ形で存在しますが、呼び名が違います。呼び名を知らないと、自分には何もないと思い込みます。
置き換えると、こうなります。
| 職場での言い方 | 外での言い方 |
|---|---|
| 予算要求・執行管理 | 予算策定、コスト管理 |
| 関係各課との協議 | 部門横断の調整、合意形成 |
| 例規・要綱の整備 | 業務ルールの設計、ドキュメント整備 |
| 窓口対応・住民説明 | 顧客対応、一次対応、説明責任 |
| 学級経営 | 30人規模のチーム運営、目標設定と進捗管理 |
そのうえで、進む先は3つあります。転職、独立、在職のまま働き方を変える。
- 転職:経験の言い換えと応募書類が中心。収入は提示額で読める
- 独立:続けられる形の見極めが中心。立ち上がりに時間がかかる
- 在職のまま:異動希望、担当の交渉、外に出る時間の確保
3つめを最初から外している人が多いのですが、役割の交渉や異動の希望で変わることもあります。3つを同じ土俵に並べて比べられる状態。これが「選べる状態」です。
在職中の1年で、何ができるか
辞めてから準備を始めると、収入が途切れた状態で準備することになります。これがいちばんきつい。選ぶ基準が「早く稼げるか」に寄るからです。
コミュニティの主宰である榊原立城も、そこでつまずいた一人です。3月に退職して4月から新しい分野を学び始めましたが、向き不向きを確かめる前に大きい金額を先に払ってしまい、そこから1年ほど「キャリア迷子」の時期が続きました。本人がその1年をどう振り返っているかは、16年勤めた教員を辞めるまでと、辞めたあとの1年で話しています。
在職のまま、適法な範囲でできることを時期で並べると、おおよそこうなります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1〜2か月目 | 体調の確認。給与明細と固定費を書き出す |
| 3か月目 | 退職手当の見込みを人事担当で確認する |
| 4〜6か月目 | 経験の棚卸し。職務経歴書の下書きを作る |
| 6〜9か月目 | 外の人に話を聞く。小さく試す(売らない範囲で) |
| 9〜12か月目 | 3つの道を比べる。決めるか、もう1年様子を見るかを決める |
どこまでが適法な範囲かは公務員が適法な範囲でできる準備は、どこまでかに、具体的な進め方は辞める前に何をしておくかにまとめました。
よくある失敗を3つ
1. 体調が落ちている状態で決めてしまう。 離れることが目的になるので、次の場所を選ぶ基準が「ここではない」だけになります。
2. 収入が途切れてから探し始める。 「稼げる」「未経験でもできる」という言葉で選びやすくなり、合わなかったときに引き返しにくくなります。
3. 人に決めてもらう。 家族、上司、転職の担当者。うまくいっているうちは問題になりませんが、つまずいたときに「あのとき言われたから」が残ります。情報は複数から集めて、決めるのは自分、という形にしておくと後悔は小さくなります。
後悔の分かれ目は公務員から転職して後悔する人としない人の違いに書きました。
「選べる状態」を作ってから決める
ここまでを一言にすると、こうなります。
辞めるか、辞めないかを決める前に、どちらも選べる状態を作る。
選べる状態とは、体調が戻っていて、辞めた場合の数字が分かっていて、自分の経験が外の言葉で説明できる状態のことです。そこまで来ると、「では、どうするか」は自分で決められます。急いで決めなくてよくなるからです。
結果として続けると決めた人も、たくさんいます。選べるうえで残ることと、選べないから残ることは、同じ職場にいても別のものです。 前者の人は、残ったあとに担当や役割を自分から動かしにいきます。
最後に、この1週間でやることをまとめておきます。
- 体調のチェック5項目を確認する。ひとつでも当てはまるなら受診の予約を取る
- 給与明細を出して、手取りと固定費を書き出す
- 人事担当に、退職手当の見込み額の確認方法を聞く(辞めると言う必要はありません)
- 「決めなくてよい月数」を計算する
- 自分の仕事を、外の言葉で3つ書き出してみる
決めるのは、そのあとです。決めきれないと感じる場合は辞める勇気が出ないとき、足りないのは勇気ではないを、銀行員から町役場を経て独立した方の実際の順番はSHUNさんのインタビューを読んでください。
よくある質問5選
質問1辞めたい気持ちは、時間が経てば消えますか。
消えることもありますし、強くなることもあります。大事なのは、消えるかどうかを待つのではなく、その間に選択肢を増やしておくことです。選択肢がある状態で「やっぱり続ける」と決めた人は、同じ職場でも働き方が変わっています。
質問2辞める前に、誰に相談すればいいですか。
職場の上司と家族は、どちらも利害が絡みます。制度や手続きの確認は人事に、迷いの整理は同じ立場で先に動いた人か、利害のない第三者に、と分けると話しやすくなります。
質問3在職中に転職活動をしてもいいのでしょうか。
就業時間外に自分の転職のために活動することは、一般に制限されていません。ただし職務専念義務や信用失墜行為の禁止に触れる形(勤務時間中の面接、職務上知り得た情報の持ち出しなど)は避けてください。
質問4次が決まっていないのに辞めても大丈夫でしょうか。
決まっていなくても辞められます。分かれ目は「決めなくてよい月数」が何か月あるかです。貯蓄と退職手当の見込み額を、辞めた後の毎月の支出で割って出してください。
質問5何年も迷っています。決められない自分がおかしいのでしょうか。
決められないのは、判断材料が足りていない状態への正常な反応であることがほとんどです。性格の問題として扱うと止まります。体調・お金・選択肢のうち、どれが埋まっていないかを特定してください。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。