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辞める勇気が出ないとき、足りないのは勇気ではない

背中を押す記事は書きません。踏み出せない理由を体調・お金・選択肢・関係の4つに分け、埋まっていない箇所を特定して、1つずつ埋める手順をまとめました。

この記事の要点

  • 踏み出せないのは性格の問題ではなく、材料が足りていないことが多い
  • 足りない箇所は4つのどれか。体調、お金、選択肢、周囲との関係
  • 勇気で決めた選択は、つまずいたときに支えがない
  • 4つは埋める順番が決まっている。体調 → お金 → 選択肢 → 関係
  • 材料がそろうと、決断は「勇気を出すこと」ではなくなる

「辞める勇気が出ない」と検索した人に、背中を押す文章は書きません。押されて決めたことは、うまくいかなかったときに支えになりません。

かわりに書くのは、踏み出せない理由の特定のしかたです。勇気が足りないのではなく、材料が足りていないことがほとんどだからです。

「勇気がない」と言葉にした時点で、話が止まる

踏み出せない理由を性格に置くと、打つ手がなくなります。性格は短期間では変わらないからです。「勇気がない」は、実際には「決めるための材料が足りない」という状態を指していることが多い。

材料は4つに分かれます。体調、お金、選択肢、周囲との関係。このうち、どれが埋まっていないのかを特定するところから始めます。

① 体調

眠れていない、休日に回復しない、朝に動けない。この状態では、そもそも判断できません。決断力の問題ではなく体の問題です。

体調が落ちているときは、すべての選択肢が悪く見えます。辞めても失敗する気がするし、残っても続かない気がする。これは判断ではなく症状です。先に働きすぎのサインを、自分でどう見分けるかを読んでください。

② お金

辞めたあとの数字が出ていないと、不安は無限に大きくなります。手取り、固定費、退職手当、生活できる月数。「生活できないかもしれない」を「あと◯万円足りない」に変えると、対処できる問題になります。

ここは調べれば必ず出ます。出ないのではなく、調べていないだけであることが大半です。人事担当に退職手当の見込みを聞くのは、辞める意思の表明ではありません(辞めたあとのお金を、退職手当から先に計算する)。

③ 選択肢

自分の経験が外で何と呼ばれるのかを知らないと、辞めた先が真っ白に見えます。真っ白なところへ踏み出すのは、誰でも怖い。

これは勇気で埋める場所ではなく、情報で埋める場所です。 言い換えの作業は公務員の経験を職務経歴書の言葉に置き換えるに、外の人と話す方法は職場以外のつながりを、在職中に作るにまとめました。

④ 周囲との関係

家族の反対、職場への言いにくさ。これは材料ではなく関係の問題なので、扱い方が違います。伝える順番と時期を変えるだけで、状況が動くことがあります(親に反対されて辞められないとき、伝える順番を変える退職を伝えたときの引き止めに、どう応えるか)。

4つのうちどれが足りていないのかは、人に話すといちばん早く分かります。同じ立場の公務員・教員が集まっている場所があります。

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埋める順番が決まっている

4つは、埋める順番があります。

  1. 体調:判断できる状態に戻す
  2. お金:数字を出す。1週間でできる
  3. 選択肢:人と話す。数か月かかる
  4. 関係:伝える時期と順番を決める

順番を飛ばすと、進んだ気にならないまま時間だけが過ぎます。 とくに3を飛ばして4に進むと、「次の当てもないのに辞めるのか」と言われて止まります。

埋まると、決断は決断でなくなる

4つが埋まったときに何が起きるか。「勇気を出して決める」ことがなくなります。 体調が戻っていて、数字が出ていて、選択肢が見えていて、伝える順番が決まっている。そこまで来ると、あとは時期を選ぶだけになります。

榊原立城も、最初に辞めたいと思ってから実際に辞めるまで、長い時間がかかっています。振り返って本人が言うのは、決められなかった理由が「何の仕事ができるか見えなかったこと」だったということです(インタビュー)。勇気の話ではありませんでした。

期限は、決断ではなく材料に切る

「いつまでに決める」と期限を切ると、材料が足りないまま決めることになります。期限を切るなら、材料のほうです。

  • 今月中に、家計の数字を出す
  • 2か月以内に、外の人に2人会う
  • 3か月以内に、職務経歴書の下書きを作る

3つが終わった時点で、決められるかどうかを見る。 決められないなら、まだ足りていない材料があります。

決めない、という判断もある

材料をそろえたうえで「いまは動かない」と決めるのは、迷っている状態とは違います。期限を決めて、もう一度見直す日を決めておくと、宙づりになりません。

たとえば「1年後にもう一度、同じ4つを確認する」と決めておく。そのあいだは、いまの仕事に集中できます。迷い続けるよりも消耗しません。

「いま決めない」と決める技術

材料をそろえたうえで、それでも決めきれないことがあります。そのときに有効なのが、期限つきで決めないと決めることです。

やり方は3つ。

  1. 見直す日を決める(半年後、1年後の同じ日)
  2. その日までに確認することを1つだけ決める
  3. それまでは、この件を考えない

3つめが難しいのですが、「考える日を決める」と、それ以外の日に考えなくて済むようになります。 迷い続ける状態がいちばん消耗するので、これだけでも負荷は下がります。

見直す日が来たら、また4つの材料を確認します。状況が変わっていれば、結論も変わります。

動けない状態が長引いているとき

何年も同じところにいる場合、材料の問題ではなく、状態の問題になっていることがあります。

  • 決めることを考えると、体に反応が出る
  • 情報を集める気力がわかない
  • 休日も仕事のことが頭から離れない

これは判断の問題ではなく、体の問題です働きすぎのサインを、自分でどう見分けるか)。先に休むこと、受診することが順番になります。

押されて決めた人と、自分で決めた人

同じように辞めた人でも、あとの受け止め方が分かれます。分かれ目は「自分で決めたと言えるか」でした(公務員から転職して後悔する人としない人の違い)。

だから、このサイトでは背中を押しません。押されて動いた選択は、うまくいかなかったときに支えがない。 かわりに、材料をそろえる手伝いをしています。

材料がそろえば、たいていの人は自分で決められます。決められないのは、意志が弱いからではなく、まだ見えていないものがあるからです。

まとめ

  • 「勇気がない」は、材料が足りない状態を指していることが多い
  • 材料は4つ。体調、お金、選択肢、周囲との関係
  • 埋める順番は、体調 → お金 → 選択肢 → 関係
  • 期限は決断ではなく、材料に切る
  • そろえたうえで「動かない」と決めるのも判断

判断の順番そのものは公務員を辞めたいと思ったら、決める前に確かめる3つのことに、相談先の選び方は職場にも家族にも言えないとき、誰に相談するかにまとめています。

よくある質問5選

質問1背中を押してほしいのですが。

このサイトでは押しません。押されて決めたことは、うまくいかなかったときに「押されたから」が残るためです。かわりに、決めるための材料をそろえるお手伝いをしています。

質問2考えているだけで何年も経ってしまいました。

考える時間が長いのではなく、確かめる対象が決まっていないことが多いです。4つのうちどれが埋まっていないかを特定すると進みます。

質問3決めきれない自分が嫌になります。

決めきれないのは、判断材料が足りない状態への正常な反応です。自分を責める前に、足りない材料を1つ埋めてください。

質問4期限を決めたほうがいいですか。

材料をそろえる期限は有効です。決断そのものに期限を切ると、材料が足りないまま決めることになります。

質問5勢いで辞めた人もいますよね。

います。ただ、うまくいった人の話は残り、そうでない人の話は表に出にくい。勢いは方法ではなく、結果として語られているだけのことが多いです。

榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ

コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。