異動がつらいとき、辞める以外の手をどれだけ持てるか
辞めるか我慢するかの二択にしないために。異動のつらさを4つに分け、それぞれに効く手、業務量の記録の取り方、次の異動までの使い方をまとめました。
この記事の要点
- 異動のつらさは4つに分かれる。業務の中身、量、人間関係、通勤や生活
- どれが原因かで効く手が変わる。全部まとめて「異動がつらい」にしない
- 業務量の問題は、記録にすると相談として扱われやすくなる
- 辞めるか我慢するかの間に、複数の手がある
- 次の異動までの期間を、準備の期間として使う手もある
この記事は医療の助言ではありません。体調に不安があるときは、主治医・産業医、自治体や共済組合の相談窓口にご相談ください。異動や勤務条件の取り扱いは所属の規程によります。
異動は自分では選べません。選べないことが続くと、人は「辞める」以外の手を思いつかなくなります。 まず、つらさの中身を分けるところから始めます。
4つに分ける
| つらさの中身 | 効きやすい手 |
|---|---|
| 業務の内容が合わない | 担当の組み替え、次の異動希望、慣れる期間を待つ |
| 量が多すぎる | 業務の分担、期限の交渉、記録して上司に示す |
| 人間関係 | 距離の取り方、相談窓口、次の異動希望 |
| 通勤・生活リズム | 勤務時間の調整、転居、働き方の相談 |
全部まとめて「異動がつらい」にすると、辞めるしか手がなくなります。 1つに分けると、打てる手が出てきます。
見分け方は簡単です。**「その部分だけが解決したら、続けられるか」**と自分に聞いてみてください。続けられるなら、原因はそこにあります。
異動直後の負荷は、誰でも高い
前提として、異動直後は誰でもきつい。業務を覚えながら回す期間があり、聞ける相手も少ない。3か月から半年で落ち着く人が多いとされます。
だから、最初の数か月で「この職場は合わない」と結論を出すのは早すぎます。ただし、体調にサインが出ている場合は別です。眠れない、休日に回復しない、朝に動けない。この場合は慣れの問題ではありません(働きすぎのサインを、自分でどう見分けるか)。
量の問題は、記録すると動く
業務量の問題は、感覚で伝えても動きません。1週間分でいいので記録してください。
- 何の作業に、何時間かかったか
- 想定外に発生した仕事の件数
- 在庁時間と、持ち帰った時間
- 自分しかできない業務がいくつあるか
数字で示すと、担当の組み替えの相談ができます。「大変です」では動かないものが、記録では動くことがあります。 測り方は公務員の残業は、なぜ職場によって違うのかにまとめました。
伝えるときは、要望ではなく状態を先に出します。
いまの担当では、◯◯に週◯時間かかっていて、△△が期限までに終わりません。優先順位をつけるか、分担を見直すか、相談させてください。
異動先の状況は、外から見ると分かりにくいものです。同じ立場の公務員・教員が、異動のつらさをどう扱ったかを話している場所があります。
公務員コミュニティに参加する人間関係が原因のとき
配置が決まっていて、人数も決まっている職場では、合わない相手から距離を取りにくい。ここが行政の職場のつらいところです。
打てる手は3つです。
- 距離の設計:会話の量、共有する私的な情報の範囲、休憩の取り方
- 記録:言動で消耗している場合、日時・内容・同席者を残す
- 外に関係を持つ:評価軸が職場ひとつしかない状態を崩す
詳しくは職場の人間関係に疲れたときにまとめました。ハラスメントに当たるかどうかを自分で判断する必要はありません。 記録があれば、相談窓口に持っていけます。
次の異動までを、準備の期間にする
異動のサイクルがある程度読める職場なら、次までの期間を準備に使う手があります。
- 経験の棚卸しを進める
- 家計を数字にする
- 外のつながりを作る
- 自分の担当を、記録として残しておく
これは辞めるための準備ではなく、選べる状態を作るための準備です(辞める前に何をしておくか)。次の異動で環境が変わっても、準備したものは残ります。
**「あと2年で異動だから、それまでに材料をそろえる」**という期限の切り方は、消耗を減らします。終わりが見えない状態がいちばんきついからです。
異動希望の出し方
希望は、出していなければ必ず通りません。出すときは次の3つを押さえてください。
- 時期:人事の動きに合う時期に出す(所属の運用を確認)
- 理由:やりたいことを書く。いまの職場の不満だけにしない
- 具体:職種や分野を書く。「どこでもいい」は判断材料にならない
健康上の事情がある場合は、産業医の意見を添えられることもあります。言いにくい事情ほど、書面に残して伝えるほうが扱われやすい。
異動の内示が出たときにできること
内示が出てから着任までの期間にも、できることがあります。
1|前任者から聞くことを決めておくこと
年間の流れ、進行中の案件、関係先、判断の慣行。**「例規を読めば分かること」ではなく「読んでも分からないこと」**を聞いてください。
2|事情がある場合に早く伝えること
健康上の事情や介護・育児の事情は、内示の前後に伝えるほうが考慮されやすくなります。人事担当への伝え方は、書面のほうが扱われやすいことがあります。
3|最初の3か月を「覚える期間」と割り切ること
完璧に回そうとすると消耗します。分からないことを聞ける相手を早く作るほうが、結果的に早く立ち上がります。
慣れの問題か、そうでないかを見分ける
異動の負荷が「慣れの問題」なのか、そうでないのかは、次で見分けられます。
| 見るところ | 慣れの問題 | そうでない可能性 |
|---|---|---|
| 時間の経過 | 3か月で少しずつ楽になる | 半年経っても変わらない |
| 体調 | 疲れるが、休めば戻る | 休んでも戻らない |
| 内容 | 分からないことが減っていく | 量そのものが多い |
| 相手 | 関係ができてくる | 関係が固定されて動かない |
右側が2つ以上当てはまるなら、慣れでは解決しません。 そこからは、記録を取って相談する段階に移ってください。
異動が続いて疲れている場合
数年ごとの異動を繰り返すうちに、立ち上げの負荷そのものに疲れることがあります。「また一から覚えるのか」という感覚です。
これは能力の問題ではありません。立ち上げは、誰にとっても負荷が高い作業です。 対処としては2つ。
- 立ち上げの手順を、自分の型として持っておく(何を、どの順で確認するか)
- 専門性が積み上がる職種への異動希望を出す
1を持っていると、毎回ゼロからにはなりません。自分用の「異動の初日にやることリスト」を作っておくだけで、負荷はかなり下がります。
異動を機に、働き方を見直す
異動は負荷が高い一方で、働き方を変えるきっかけにもなります。 担当が変わるタイミングは、やり方を変えても違和感が出にくい。
やっておくとよいのは3つです。
- 前任のやり方を踏襲しない部分を、1つだけ決める
- 記録の取り方を、自分の型に合わせる
- 相談できる相手を、着任後1か月以内に作る
新しい環境のほうが、自分の型を通しやすい。 数年ごとに異動がある職場では、この機会を使えるかどうかで負荷が変わります。
まとめ
- つらさを4つに分ける。業務の中身・量・人間関係・通勤や生活
- 異動直後の負荷は誰でも高い。3か月から半年は慣れの期間
- 量の問題は記録で動く。感覚では動かない
- 体調のサインが出ているときは、慣れの問題ではない
- 次の異動までを準備の期間として使う
辞めるかどうかの判断そのものは公務員を辞めたいと思ったら、決める前に確かめる3つのことを読んでください。
よくある質問5選
質問1異動して3か月ですが、もう限界です。
体調のサインが出ているなら、まず医療機関に相談してください。異動直後は誰でも負荷が高く、慣れで解決する部分と、そうでない部分があります。
質問2異動希望は出しても通りませんか。
通らないこともありますが、出していない希望は必ず通りません。出し方と時期を人事担当や上司に確認してください。
質問3我慢していれば、また異動で変わりますか。
顔ぶれが変われば楽になることもあります。ただ、次の異動まで何年あるかは読めません。いつまで様子を見るかを自分で決めておいてください。
質問4異動の内示を断れますか。
原則として応じる前提の仕組みです。ただし、健康上の事情や家庭の事情は、事前の申告で考慮される場合があります。人事担当に相談してください。
質問5慣れるまでどれくらいかかりますか。
業務にもよりますが、3か月から半年で落ち着く人が多いようです。それを過ぎても同じ負荷が続く場合は、慣れの問題ではありません。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。