定年延長で、50代からの働き方はどう変わるか
定年の段階的な引き上げ、役職定年、定年前再任用短時間勤務。制度の枠組みと引き上げスケジュール、給与と退職手当の見通し、50代の選択肢の広げ方をまとめました。
この記事の要点
- 定年は2023年度から2年に1歳ずつ引き上げられ、60歳以降の働き方に複数の形ができた
- 60歳を超えると、役職と給与の水準が変わる仕組みがある
- 定年前再任用短時間勤務は「60歳に達した日以後」が対象。40代から使える制度ではない
- 制度を知らないまま「延びた分だけ働く」と考えると、選択肢を見落とす
- 50代前半に、収入と働き方の見通しを一度作っておくと動きやすい
定年の段階的引き上げ、管理監督職勤務上限年齢制(役職定年)、定年前再任用短時間勤務制は、2023年4月から順次施行されています。適用時期・給与の水準・手続きは所属によって異なるため、最新の内容は人事担当と給与条例でご確認ください。
いわゆる定年延長(定年の段階的な引き上げ)が始まり、60歳以降の働き方に複数の形ができました。制度の中身は自分の適用年によって違うので、知らないまま「その分だけ長く働く」と考えていると、選べたはずの形が見えないまま過ぎます。
この記事では、枠組みと、確認すべき数字、そして50代で取れる選択肢を整理します。
押さえておく3つの枠組み
① 定年の段階的な引き上げ
定年は2023年度から、2年に1歳ずつ引き上げられています。おおよその目安は次のとおりです。
| 退職する年度 | 定年の年齢 |
|---|---|
| 2023年度・2024年度 | 61歳 |
| 2025年度・2026年度 | 62歳 |
| 2027年度・2028年度 | 63歳 |
| 2029年度・2030年度 | 64歳 |
| 2031年度以降 | 65歳 |
自分が何歳で定年になるかは生年月日によって変わり、退職日の扱いにも決まりがあります。自分の適用は必ず所属の条例と人事担当で確認してください。
② 役職定年(管理監督職勤務上限年齢制)
原則60歳に達した日の翌日以後の最初の4月1日までに、管理監督職からは外れる仕組みです(特例として引き続き任用される場合もあります)。
役割が変わるということは、働き方と評価のされ方も変わるということです。これまで決めていたことを決めなくなる、指示する側から支える側に回る。ここを想定していないと、当事者になったときに戸惑います。
③ 定年前再任用短時間勤務
60歳に達した日以後に定年前退職した人を対象に、短時間勤務の職に採用できる仕組みです。40代や50代前半から使える制度ではありません。
それでも、フルタイムで続けるか、辞めるかの二択ではないということは押さえておいてください。60歳以降に、働く時間を減らしながら別のことを始める、という形が制度上あり得ます。
給与と退職手当の見通し
60歳を超えた職員の給与については、当分の間、一定の水準とする仕組みが設けられています。水準は所属の給与条例によります。
確認するのは3つです。
| 確認すること | どこで |
|---|---|
| 自分の定年年齢 | 人事担当 |
| 60歳以降の給与の水準 | 給与条例、人事担当 |
| 退職手当の算定がどうなるか | 退職手当条例、人事担当 |
3つめは見落としやすい部分です。 定年の引き上げに伴って、退職手当の算定に経過的な取り扱いが設けられている場合があります。自分の場合どうなるかを、早めに確認しておいてください。
制度の数字が出たあと、「では自分はどうするか」を話せる相手が要ります。同じ年代の公務員・教員と、すでに外に出た人がいる場所があります。
公務員コミュニティに参加する「長く働ける」は、そのままでは選択肢にならない
定年が延びること自体は、選択肢が増えたことを意味します。延びた期間の使い方を先に決めておくと、同じ年数でも選び方が変わります。
- 同じ職場で、役割を変えて続ける
- 短時間で働きながら、別のことを始める
- 早めに外に出て、次の形を作る
どれを選ぶにしても、50代前半に一度見通しを作っておくと動きやすくなります。 60歳を過ぎてから考え始めると、選べる形が限られます。
年金との関係も確認する
定年が延びると、年金の受給開始との関係も変わります。確認するのは2つです。
- 自分の年金の受給開始年齢と、見込み額(ねんきん定期便、ねんきんネット)
- 定年から受給開始までの期間に、収入がどうなるか
この2つを並べると、「何歳まで、いくら稼ぐ必要があるか」が出ます。 そこから逆算して働き方を選ぶと、感覚ではなく条件で決められます。
50代でやっておくこと
制度の確認が終わったら、次の3つです。
- 経験の言い換え:30年分の仕事を、役割と決裁の範囲で説明できるようにする
- 外のつながり:職場以外に、話せる相手を作る(職場以外のつながりを、在職中に作る)
- お金の見通し:退職手当、年金、60歳以降の収入を並べる
とくに2つめが効きます。50代からの仕事は、公募よりも人づての紹介から決まった、という話をよく聞きます。
お金の計算は辞めたあとのお金を、退職手当から先に計算するに、その後の働き方は50代から始めるセカンドキャリアの考え方に、漠然とした不安の分け方は将来が不安なとき、不安を3つに分けるにまとめました。
役職定年を迎える前にやっておくこと
役職定年は、収入だけでなく役割が変わる転換点です。当事者になってから考えると、気持ちの整理が追いつきません。
先にやっておくと楽になるのは、次の3つです。
1|引き継ぎの設計です
自分が抜けたあとに誰が何を持つか。役職定年は時期が読めるので、1〜2年前から少しずつ渡せます。
2|役割が変わったあとの自分の置き方を決めておくこと
決める側から支える側に回ることを、降格として受け取るか、別の役割として受け取るか。ここで消耗する人が少なくありません。
3|外の関係を作っておくこと
職場での位置づけが変わっても、外に自分を知っている人がいれば、比重が偏りません(職場以外のつながりを、在職中に作る)。
制度が変わる途中であることの意味
定年の引き上げは段階的に進んでいるため、同じ職場でも、数年違うだけで前提が変わります。 先輩の経験がそのまま当てはまらない、ということです。
「◯◯さんはこうだった」という話を参考にする場合は、その人がどの年度に該当したかを確認してください。制度の移行期は、伝聞がいちばん当てになりません。
確認の方法はひとつです。自分の生年月日を伝えて、人事担当に「私の場合はどうなりますか」と聞く。1回の問い合わせで、前提がそろいます。
そのうえで、お金の見通しを作ってください(辞めたあとのお金を、退職手当から先に計算する)。制度の確認と数字がそろうと、50代の選択肢は具体的に比べられるようになります。
いまの若手・中堅への影響
定年の引き上げは、50代だけの話ではありません。上の世代が長く在職することで、ポストの動き方や人員の構成も変わります。
若手・中堅にとって確認しておくとよいのは2つです。
- 自分の昇任・異動の見通しがどう変わるか
- 自分が定年を迎える年度と、そのときの制度
2は、いま調べても先の話に見えます。ただ、残り年数を数えるときの前提になります。40代で働き方を比べる場合、定年が何歳かで計算が変わります(40代からの選択肢は、転職だけではない)。
まとめ
- 定年は2年に1歳ずつ引き上げ中。自分の適用年を確認する
- 役職定年は原則60歳。役割と評価のされ方が変わる
- 定年前再任用短時間勤務は60歳以後が対象
- 給与・退職手当の経過的な取り扱いを人事担当で確認する
- 年金の受給開始と並べて、「何歳まで、いくら」を出す
よくある質問5選
質問1自分は何歳が定年になりますか。
生年月日によって異なります。段階的な引き上げの途中なので、所属の人事担当で自分の適用年を確認してください。
質問260歳を超えると給与は下がりますか。
当分の間、60歳を超えた職員の給与は一定水準に設定される仕組みが設けられています。具体的な水準は所属の給与条例で確認してください。
質問3短時間で働く選択はできますか。
定年前再任用短時間勤務など、短時間で働く仕組みが設けられています。適用の条件は所属によって異なります。
質問4役職定年になると、仕事はどう変わりますか。
管理監督職から外れ、別の職務に就く形になります。役割が変わるので、評価のされ方や働き方も変わります。
質問5退職手当はどうなりますか。
定年の引き上げに伴う経過的な取り扱いが設けられている場合があります。自分の場合どうなるかは、退職手当条例と人事担当で確認してください。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。