公務員を辞めてフリーランスになるとき、先に決めること
案件を探す前に決めるのは「自分の型」です。収入の立ち方、最初の仕事の取り方、単価の決め方、在職中にできる準備、開業の手続きまで順番にまとめました。
この記事の要点
- 案件探しより先に「自分の型」を決める。何を、誰に、どの形で提供するのか
- 収入は段階的に立つ。最初の数か月を耐えられる生活費が前提になる
- 最初の仕事は知っている人から来ることが多い。在職中のつながりが効く
- 単価は「時間あたりの下限」から決める。安く受けると後から上げにくい
- 公務員は原則として雇用保険の対象外。辞めた直後の収入は自分で組む
税務・社会保険の取り扱いは個々の状況で異なります。この記事は2026年9月時点の一般的な整理です。具体的な判断は税務署・年金事務所・専門家にご相談ください。副業・兼業の可否は所属の規程でご確認ください。
フリーランスとして独立するときに、最初に探したくなるのは案件です。順番としては後になります。先に決めるのは自分の型です。
この記事では、型の決め方、収入の立ち方、最初の仕事の取り方、単価の決め方、そして在職中にできることを順に書きます。
自分の型とは
3つが決まっていれば型になります。
- 何を:提供するもの(作る、教える、代わりにやる、伴走する)
- 誰に:相手(個人か事業者か、どの業種か)
- どの形で:単発か継続か、時間で売るか成果で売るか
この3つが曖昧なまま案件を探すと、来た仕事を全部受けることになり、単価も内容もばらつきます。続けられるかどうかは、この型が自分に合っているかで決まります。
町役場の職員だったSHUNさんは、ノーコードツールでWebアプリを作る、という形を先に固めてから独立しています(インタビュー)。
型を決めるときに使えるのが、行政での経験です。制度に関わる仕事、書類が多い仕事、関係者が多い仕事。ここは公務員だった人が理解を持って入れる領域で、参入する側の強みになります。
収入は段階的に立つ
独立した初月から前職と同じ収入になることは、ほとんどありません。
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 最初の数か月 | 知人・紹介から小さい仕事。収入は不安定 |
| 半年〜1年 | 続く相手が数件できる。ここで型が固まる |
| 1年以降 | 単価と件数の調整ができるようになる |
期間は人によりますが、立ち上がりに時間がかかる前提で生活費を組むことは共通です。公務員は原則として雇用保険の被保険者ではないため、辞めた直後の収入は自分で用意することになります(公務員を辞めた後、何をするか)。
目安として、生活費の6か月分が手元にあると、焦らずに型を固められます。3か月未満なら、次の仕事を決めてから辞める形のほうが安全です。計算は辞めたあとのお金を、退職手当から先に計算するにまとめました。
最初の仕事は、たいてい知っている人から来る
募集サイトだけを見ていると、実績のない状態からは通りにくい。実際には、すでに自分を知っている人からの依頼が最初の一件になることが多いようです。
だから在職中にやっておくと効くのは、技術の習得よりも、自分が何をできるのかを説明できる状態にすることです。
説明の型は短くて構いません。
行政で◯◯を担当していました。いまは△△をする仕事をしています。こういう場面で役に立てます。
これを、会う人に言えるようにしておく。「何かあったらお願いします」では思い出してもらえません。 場面を1つ具体的に添えると、相手の頭に残ります。
どこまでが適法な範囲かは公務員が適法な範囲でできる準備は、どこまでかを確認してください。
独立前に必要なのは、案件ではなく「試す相手」と「聞ける相手」です。公務員から外に出た人と、いま準備している人が集まっている場所があります。
公務員コミュニティに参加する単価は、下限から決める
最初の失敗で多いのが、安く受けてしまうことです。一度決めた単価は、同じ相手に対して上げにくい。だから先に下限を決めます。
- 必要な月収を出す(生活費+税・社会保険+事業の経費)
- 月に稼働できる時間を出す(事務や営業の時間を除く)
- 1 ÷ 2 で、時間あたりの下限を出す
- そこに、稼働できない時間ぶんの上乗せをする
独立すると、稼働時間の3〜4割は仕事以外(営業、経理、学習)に消えます。 そのぶんを乗せないと、働いても手元に残りません。
下限を切る仕事は受けない、と決めておくと、消耗する案件を避けられます。断るときは「いまの体制ではこの金額でお受けできません」で足ります。
在職中にできる準備
報酬が発生しない範囲は、許可の話になりません。次のことは在職のままできます。
- 型の3要素(何を・誰に・どの形で)を書き出す
- 売らずに、動くものを1つ作る
- 学ぶ。無料・少額の範囲で試す
- 自己紹介の型を作って、人に話してみる
- 家計を数字にして、必要な月収を出す
報酬が発生する段階になると、許可・承認の対象になります。町役場の職員だったSHUNさんは、正職員のまま副業で試そうとして許可が下りず、パートタイムの会計年度任用職員に切り替えて1年試してから独立しました(インタビュー)。勤務形態や兼業の扱いは自治体ごとに違うので、同じ形が取れるかは所属で確認してください。
開業と、そのあとの事務
辞めたあとにやる事務は、次のとおりです。
- 開業届の提出(事業の開始から1か月以内)
- 国民健康保険・国民年金への切り替え
- 事業用の口座を分ける
- 会計の記録の方法を決める(クラウド会計など)
- 領収書の保管を始める。翌年の確定申告で使う
口座を分けることと、記録を最初から取ることは、後から直すと大変です。 開業の初日にやっておくと楽になります。
つまずく型を知っておく
榊原立城は、退職直後に「稼げる・未経験OK」で選んだ仕事が合わず、1年ほど迷う時期を過ごしています(インタビュー)。同じ型は公務員が独立でつまずく、いちばんよくある順番に整理しました。
独立で消耗するのは、技術が足りないときではなく、誰の、どんな仕事を受けるかを決めていないときです。型を先に決める、というのはそのための作業です。
最初の1年でやることの順番
独立してからの1年は、仕事を取ることと、形を固めることを同時に進める時期です。順番をつけると迷いが減ります。
最初の3か月:知人・紹介から小さい仕事を受ける。単価より、続くかどうかを見る。同時に、事業用の口座と記録の仕組みを作る。
4〜6か月:受けた仕事から、型が合うものと合わないものを分ける。合わないものは断る判断を始める。
7〜12か月:続く相手を増やす。単価を見直す。確定申告の準備を進める。
1年で収入が安定しないのは普通です。 焦って単価を下げると、あとで戻せません。
一人で仕事をすることの負荷
独立してからの負担は、収入だけではありません。相談する相手がいないことが、想像以上に効きます。
- 見積もりが妥当かどうか判断できない
- 断っていいのか分からない
- うまくいかないときに、原因が自分にあるのか分からない
組織にいたときは、同僚や上司が判断の材料になっていました。それが一気に無くなります。外に、同じように仕事をしている人とのつながりを持っておくと、この負荷が下がります(職場以外のつながりを、在職中に作る)。
独立が合わなかったときの戻り方
進めてみて合わない、と分かることもあります。そのときは、早く認めるほうが傷が浅い。
- 生活費の残り月数を確認する
- 転職に切り替える場合、独立期間を職務経歴書に書く(何をして、何が分かったか)
- 自治体・府省によっては経験者採用や再採用の枠がある
独立した期間は、空白ではありません。 自分で決めて動いた経験として書けます。実際、その経験が評価されて採用される場合もあります。
「独立したら戻れない」と思い込むと、判断が遅れます。戻る道も含めて選択肢に入れておくほうが、思い切った挑戦もしやすくなります。
まとめ
- 案件より先に「何を・誰に・どの形で」を決める
- 収入は段階的に立つ。生活費6か月分が目安
- 最初の仕事は知人から来る。自己紹介の型を作っておく
- 単価は下限から決める。稼働できない時間ぶんを乗せる
- 在職中は報酬の発生しない範囲で試す。報酬が出るなら許可の確認から
在職中の準備の全体像は辞める前に何をしておくかにあります。
よくある質問5選
質問1何のスキルもないのですが、フリーランスになれますか。
「スキルがない」ではなく「まだ言い換えていない」ことが多いです。調整、資料作成、説明、進行管理は、そのまま仕事になる形があります。
質問2最初の案件はどうやって取りますか。
知人からの紹介が多い経路です。募集サイトを見る前に、自分が何をできるのかを周囲に説明できる状態にしておいてください。
質問3開業届はいつ出しますか。
所得税法では、事業の開始から1か月以内に提出することとされています。税務の扱いは状況で変わるため、税務署または税理士に確認してください。
質問4単価はどう決めればいいですか。
必要な月収から逆算して、稼働できる時間で割り、時間あたりの下限を出します。その下限を切る仕事は受けない、と先に決めておくと消耗しません。
質問5在職中に副業として試せませんか。
報酬が発生する場合は許可・承認の対象になります。所属の規程を確認してください。許可が下りなかった人が勤務形態を変えて試した例もあります。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
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