この記事の要点
- 疲れの正体は、相手そのものより「関係を選べないこと」にあることが多い
- 閉じた関係の中だけで評価されると、自分の見え方が固定される
- 距離の設計・記録・外のつながりの3つで、負荷は下げられる
- ハラスメントに当たるかを自分で判断する必要はない。記録して相談する
- 体調に出ているときは、関係の調整より先に医療機関へ
この記事は医療の助言ではありません。体調に不安があるときは、主治医・産業医、自治体や共済組合の相談窓口にご相談ください。ハラスメントに関する手続きは、所属の規程と相談窓口をご確認ください。
職場の人間関係に疲れた、という相談は多いのですが、中身を聞いていくと、特定の誰かが問題というより、関係を選べないことそのものが負荷になっていることがよくあります。
この記事では、その構造と、下げられる負荷の下げ方を書きます。
閉じた関係が持つ負荷
役所も学校も、配置が決まり、人数が決まり、数年は同じ顔ぶれで過ごします。合わない相手がいても、距離を大きくは取れません。席も、担当も、会議の場も変わらない。
さらに、評価も同じ集団の中で決まります。その場での見え方が、自分の評価そのものになりやすい。 別の場所で評価される機会がないぶん、一度ついた印象が固定されます。
ここが、閉じた関係のいちばんしんどい部分です。相手が特別にひどいわけではなくても、逃げ場がないだけで負荷になる。 この構造を理解しておくと、自分を責めずに済みます。
3つの手
① 距離の設計
物理的にも、情報的にも、距離は少し作れます。会話の量、共有する私的な情報の範囲、休憩の取り方、昼食の場所。全部は変えられませんが、全部そのままである必要もありません。
「仲良くする」ことを目標から外すのも有効です。業務が回る関係であれば足ります。好かれることと、仕事ができることは別です。
② 記録
相手の言動で消耗している場合、記録を取ってください。日時、内容、同席者、そのとき自分がどう対応したか。
ハラスメントに当たるかどうかを自分で判断する必要はありません。 記録があれば、相談窓口や人事に持っていけます。記録がないと、相談しても「そう感じた」という話にとどまります。
相談を理由に不利益な取り扱いをすることは認められていません。心配な場合は、外部の相談窓口や共済の相談サービスから始める方法もあります。
③ 外に1つ関係を持つ
これが効きます。職場の外に、自分を知っている人がいる状態を作ると、職場の関係の比重が下がります。 評価軸が1つしかない状態から抜けられるからです。
在職中でも、報酬が絡まない範囲なら参加できる場は多くあります(職場以外のつながりを、在職中に作る)。
職場の話を、職場の外の人に聞いてもらえるだけで軽くなることがあります。同じ立場の公務員・教員が集まっている場所があります。
公務員コミュニティに参加する辞める理由としては扱いにくい
人間関係を理由に辞めると、次の場所で同じことが起きないかが不安になります。そこで理由を1つに決めずに、状態で見るほうが判断しやすくなります。
- 体調にサインが出ているか(働きすぎのサインを、自分でどう見分けるか)
- 異動で変わる可能性があるか(異動がつらいとき、辞める以外の手をどれだけ持てるか)
- 外に出た場合に、何ができるか
3つのうち2つ以上が動かないなら、環境を変える理由として十分です。 逆に、体調が原因なら、まず休むことが先になります。
相談する相手を分ける
人間関係の相談は、相手を間違えると広がります。
- 同じ職場の同僚:共感は得られるが、話が伝わるリスクがある
- 管理職・人事:対応してもらえるが、記録に残る
- 相談窓口・産業医:守秘が前提。まずここが安全
- 職場の外の人:利害がない。整理に向く
順番としては、外の人に話して整理してから、窓口に持っていくのが負担が少ない形です。相談先の選び方は職場にも家族にも言えないとき、誰に相談するかにまとめました。
体調に出ているとき
眠れない、休日に回復しない、朝に動けない状態が続いているなら、関係の調整より先に医療機関に相談してください。人間関係の問題として扱っているうちに、体の問題になっていることがあります。
榊原立城がコミュニティを作ったのは、職場では言えない話をする場所がなかったからです(インタビュー)。話す相手が職場の中にしかいない状態を、まず崩してください。
関係が固定される前にできること
異動して間もない時期なら、関係が固定される前に打てる手があります。
1|最初に自分から話しかける相手を決めておくこと
全員と仲良くする必要はありません。業務で必ず関わる人と、気軽に聞ける人。この2人がいれば回ります。
2|自分の仕事の進め方を先に伝えること
「確認は書面でお願いしたい」「午前中は集中して処理したい」。最初に言えば要望として通りますが、あとから言うと対立になります。
3|私的な情報の出し方を決めておくこと
一度出した情報は戻せません。職場での距離感は、最初の数か月でだいたい決まります。
それでも合わないときの判断基準
手を尽くしても合わない相手はいます。そのときに見るのは、次の2つです。
- 業務が回っているか:感情の問題か、仕事に実害が出ているか
- 自分の状態が落ちていないか:睡眠、食事、回復、思考
1だけなら、距離を取って業務を回す形で持ちこたえられます。2に及んでいるなら、それは我慢の範囲を超えています。 記録を取り、相談窓口に持っていってください。
判断を先延ばしにすると、「合わない相手」の問題が「自分の体調」の問題に変わります。 そうなると、関係の調整では戻りません。順番としては、早めに手を打つほうが軽く済みます。
自分が消耗しやすい相手の型を知る
同じ職場でも、消耗する相手とそうでない相手がいます。自分がどの型に弱いかを知っておくと、距離の取り方を先に決められます。
- 大きい声で断定する人
- 機嫌の波が大きい人
- 返事をしない、反応が読めない人
- 責任の所在を曖昧にする人
弱い型が分かっていると、初動が変わります。 記録を早めに取る、二人きりで話さない、やり取りを書面にする。相手を変えるのではなく、自分の守り方を変えるほうが現実的です。
職場の関係を、全部よくしようとしない
真面目な人ほど、関係の悪さを自分の責任として引き受けます。ただ、職場の人間関係は、全員でつくっているものです。一人で改善できる範囲には限りがあります。
やることを絞ってください。
- 業務が回る関係を保つ(好かれる必要はない)
- 消耗する相手とは距離を設計する
- それ以外は、変えようとしない
3つめがいちばん効きます。 変えられないものに力を使わないと決めるだけで、残る体力が変わります。
職場を離れる判断につながる場合
人間関係が理由で働き方そのものを考え始めたなら、材料をそろえる段階に移ります。順番は他の理由と同じです。
体調、お金、選択肢。この3つを確かめたうえで、辞めるか、異動を待つか、残って距離を設計するかを比べます(公務員を辞めたいと思ったら、決める前に確かめる3つのこと)。
人間関係は、辞める理由として周囲に説明しにくいぶん、自分の中で材料をそろえておくことが効きます。
まとめ
- 疲れの正体は、相手より「関係を選べないこと」にあることが多い
- 距離の設計・記録・外のつながりの3つで負荷は下げられる
- 「仲良くする」を目標から外す。業務が回れば足りる
- ハラスメントの判断は自分でしない。記録して相談する
- 体調に出ているときは、関係の調整より先に受診する
よくある質問5選
質問1自分に問題があるのでしょうか。
原因を自分に寄せすぎないでください。配置と人数が固定された環境では、相性の問題が逃げ場のない形で表面化します。
質問2我慢していれば異動で変わりますか。
顔ぶれが変われば楽になることもあります。ただ、次の異動まで何年あるかは読めません。いつまで様子を見るかを自分で決めておいてください。
質問3ハラスメントかどうか分かりません。
判断に迷う段階でも、日時・内容・同席者を記録しておいてください。相談窓口に持っていくときの材料になります。
質問4相談すると立場が悪くなりませんか。
相談を理由に不利益な取り扱いをすることは認められていません。心配な場合は、まず外部の相談窓口や共済の相談サービスを使う方法もあります。
質問5仲良くしなければいけませんか。
業務が回る関係であれば足ります。好かれることと、仕事ができることは別です。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。