教員から未経験の職種へ。「未経験」の書き方を変える
教員の経験は未経験ではなく「別の場で同じことをしていた」と書けます。職務経歴書の書き方、応募先の選び方、面接で必ず聞かれる3つ、最初の3か月の乗り切り方までまとめました。
この記事の要点
- 「未経験」と書くと、本当に何もしていないように読まれる。別の場で同じことをしていた、と書く
- 書き出すのは、担っていた役割・決めていた範囲・変えた経験の3つ
- 応募先は「教える対象がある職種」から広げると、経験が地続きになる
- 面接で聞かれるのは辞めた理由ではなく、次で何ができるか
- 最初の3か月は誰でも戸惑う。慣れる部分と合わない部分を分けて見る
職務経歴書に「未経験ですが」と書くと、読む側には本当に何もしていない人として届きます。教員の16年、10年、5年は、そういう時間ではありません。
書き方を変えるだけで通り方が変わります。未経験ではなく、別の場で同じことをしていた、と書きます。この記事では、その書き方と、応募先の選び方、面接での答え方を順に書きます。
「未経験」の代わりに書くこと
書き出すのは3つです。
- 担っていた役割:担任、学年の運営、分掌の主任。何人を、どの期間
- 決めていた範囲:自分の判断で決めていたこと、上に上げていたこと
- 変えた経験:手順を作った、資料を整えた、行事の進め方を変えた
「教科を教えていました」ではなく、この3つで書くと、教育以外の職種の採用担当にも読めます。
とくに2が抜けやすい。学校では決裁の形が民間と違うため、「自分は決めていない」と感じがちですが、日々の判断の多くは自分で決めています。誰に相談し、どこから管理職に上げていたか。これを書くと、責任の範囲が伝わります。
経験を外の言葉に置き換える対応表は教員の経験を、外の仕事の言葉に言い換えるに、書式そのものは公務員の経験を職務経歴書の言葉に置き換えるにまとめました。
数字は、成果でなくていい
民間の職務経歴書には数字が要る、と言われて手が止まる人がいます。売上の数字は出せません。ただ、規模を示す数字なら必ずあります。
- 担任した学級の人数、学年の規模
- 担当した教科の授業時数
- 分掌で動かした行事の参加人数、関わった教職員の数
- 保護者対応の件数(差し支えない範囲で)
- 学年やチームで動かした予算
「正確にやっていた」を、規模の数字に置き換えるのがこの作業です。成果として盛る必要はありません。
応募先は「地続き」から広げる
いきなり遠い業界に飛ぶより、経験が説明しやすい職種から見ていくほうが通ります。
- 教える・育てる対象がある職種(研修、人材育成、教育サービス)
- 人と直接向き合う職種(サポート、カウンセリング、就労支援、営業)
- 設計・段取りが中心の職種(企画、進行管理、業務の改善)
榊原立城は、16年の教員経験を「一人ひとりの目標づくりに伴走する仕事」として言い直し、コーチングの仕事に進んでいます。同じことを大人に対してやっている感覚だと話しています(インタビュー)。
応募先を選ぶときは、求人票を3件に絞って共通項を出してください。そこに書かれているのが、いま自分に足りないものです。全部を満たしてから応募する必要はありません。
学校の外にどんな仕事があるのかは、中にいると本当に見えません。すでに外に出た元教員と、いま準備している人が話している場所があります。
公務員コミュニティに参加する面接で聞かれるのは、辞めた理由ではない
辞めた理由は必ず聞かれますが、採否を分けるのはそこではありません。次の場所で何ができるかが伝わるかどうかです。
答えを用意しておくのは3つです。
1. なぜ辞めたのか。 前の職場の不満を長く話さない。伝わるのは不満だけになります。「◯◯をやりたくなった」に接続します。
2. うちで何ができるか。 応募先の仕事の、どの部分に自分の経験が重なるかを1つ挙げる。抽象的な意欲ではなく、具体で答えます。
3. 年下の上司とやれるか。 直接は聞かれませんが、見られています。「教えてもらう前提で入ります」と自分から言えると印象が変わります。
3つとも、30秒で言えるかを基準に整えてください。長く話すほど伝わらなくなります。
入ってからの3か月
移った直後に起きることも、知っておくと落ち着きます。
1か月目:用語とシステムが分からない。ここは誰でも同じなので、聞ける相手を早く作るのが正解です。
2か月目:自分の仕事の速さが基準に合っているか不安になる。学校の丁寧さが過剰と受け取られることがあります。多くは習慣の差です。
3か月目:評価の軸が見えてくる。何を増やすと喜ばれるのかが分かり、仕事の組み立て方が変わります。
この3か月で「合わなかった」と判断するのは早すぎます。 判断はもう少し先に置いてください。
「通用しない」と感じたときに見るところ
書いてみて「何もない」と感じたら、それは経験がないのではなく、言い換えが足りていないことがほとんどです。見るのは3つです。
- 誰と、何を決めてきたか
- どれくらいの規模を扱ってきたか
- 自分で変えたものがあるか
詳しくは公務員は民間で通用しないのかにまとめました。免許が活きる仕事と、免許がなくても効く経験の整理は教員免許を活かせる仕事と、免許がなくても効く経験にあります。
応募書類でつまずく3つ
教員から応募するときに、書類の段階でつまずきやすいのは次の3つです。
1|志望動機が抽象的になること
「人の成長に関わりたい」だけでは、どの会社にも出せる文章になります。応募先の事業のどの部分に、自分の経験が重なるのかを1つ挙げてください。
2|教育の言葉のまま書くこと
学級経営、校務分掌、生徒指導。これらは外では通じません。置き換えの表を使ってください(教員の経験を、外の仕事の言葉に言い換える)。
3|謙遜しすぎること
「教員しかやっていないので何もできませんが」と書く人がいます。読む側はそのとおりに受け取ります。 事実を並べれば十分で、評価は相手がします。
家族や生活との兼ね合い
教員から民間に移ると、勤務時間帯や休みの取り方が変わります。夏休みや冬休みのまとまった休みがなくなることも、生活には大きい変化です。
先に確認しておくとよいのは3つ。
- 年間の休みの取り方(有給の消化率、長期休暇の可否)
- 勤務時間帯(夜、土日の扱い)
- 転勤の有無
収入だけで比べると、この部分が抜けます。 とくに子どもがいる場合は、生活のリズムが変わることの影響が大きい。求人票に書かれていない部分は、面接で確認して構いません。
迷ったときに戻る場所
応募を進めるうちに、「本当に辞めていいのか」と揺れることがあります。そのときは、判断の材料に戻ってください。
- 体調は判断できる状態か
- 辞めたあとの数字は出ているか
- 自分の経験は外の言葉で説明できるか
この3つが埋まっていれば、揺れても戻れます(公務員を辞めたいと思ったら、決める前に確かめる3つのこと)。応募してみて、通ってから決めるという順番も取れます。内定を得てから断ることもできます。
まとめ
- 「未経験」ではなく「別の場で同じことをしていた」と書く
- 役割・決めていた範囲・変えた経験の3つを書き出す
- 数字は成果でなく規模でよい
- 応募先は地続きの職種から広げる。求人3件の共通項を出す
- 面接で答えるのは、辞めた理由ではなく次で何ができるか
よくある質問5選
質問1教員経験はマイナスになりませんか。
マイナスになるのではなく、伝わっていないことが多いです。学級経営は少人数のマネジメント、保護者対応は利害の異なる相手との折衝として説明できます。
質問2どんな職種に移る人が多いですか。
研修・人材育成、カスタマーサポート、教育系の企画・営業、バックオフィスなど、人と関わる職種は地続きに説明しやすい傾向があります。
質問3年齢が上がってからでも移れますか。
職種によります。年齢が上がるほど、任された範囲を具体的に説明する必要が出てきます。
質問4民間で使う用語が分かりません。
入ってから覚えれば足ります。面接で分からない言葉が出たら、その場で確認して構いません。分かったふりをするほうが不利になります。
質問5教員に戻る道は残りますか。
免許が有効であれば、講師登録や採用試験の受験は可能です。制度は自治体ごとに異なるため、教育委員会で確認してください。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。