教員免許を活かせる仕事と、免許がなくても効く経験
免許が要る仕事は限られますが、免許より効くのは授業設計と関係づくりの経験です。免許が活きる場所、免許の有効性、外で効く3つの経験、書き方までまとめました。
この記事の要点
- 免許が必須の仕事は限られる。免許を軸にすると選択肢が狭くなる
- 外で効くのは、授業設計・進行・関係づくりの経験のほう
- 学校以外にも、教えることが中心の仕事は複数の業界にある
- 更新制は2022年7月に発展的解消。当時有効だった免許は引き続き有効として扱われる
- 免許は「持っている資格」ではなく「何年、誰に、何を教えたか」で書く
教員免許の更新制度は2022年7月に発展的解消となり、更新講習による更新は行われていません。かわりに2023年4月から、研修等に関する記録の作成と、それに基づく指導助言の仕組みが始まっています(教育公務員特例法)。免許の有効性や講師登録の取り扱いは、各都道府県の教育委員会でご確認ください。
「教員免許を活かせる仕事」で調べると、学校関連の職種が並びます。間違いではありませんが、免許を軸にすると選択肢が狭くなります。
免許が必須なのは、学校の教壇に立つ仕事が中心です。それ以外の「教えること」に、免許はほとんど要りません。この記事では、両方を並べます。
免許が効く場所
- 学校(常勤・非常勤・講師)
- 学習塾・予備校、通信制高校のサポート校(必須ではないが説明が早い)
- 教育委員会の事務・専門職、教育支援センター
- 教材会社・教育サービスの企画、編集、コンテンツ制作
- 放課後等デイサービス、フリースクール、学習支援のNPO
- 企業の研修部門、eラーニングの設計
- 日本語教師(別の資格が必要。教壇経験は活きる)
働きながら準備する手として、講師として勤務しながら次を探す人もいます。収入と時間のバランスを先に確認してください(教員が辞めるタイミングを、年度で考える)。
免許の有効性を確認しておく
更新制が2022年7月に発展的解消となったため、当時有効だった免許状は、旧制度の有効期限を過ぎていても有効なものとして扱われます。
一方で、それ以前に失効している場合は取り扱いが異なります。戻る道を選択肢として残しておきたい場合は、いまの状態を教育委員会で確認しておいてください。 「たぶん失効している」と思い込んでいるだけのことがあります。
なお、更新制と入れ替わる形で、2023年4月から研修等に関する記録の仕組みが始まっています。現職の方は、この記録が自分のキャリアの資料にもなります。
免許より効く3つの経験
| 経験 | 外での使いどころ |
|---|---|
| 授業設計 | 研修設計、eラーニングの制作、マニュアル設計 |
| 進行(45分を回す力) | ファシリテーション、イベント運営、会議設計 |
| 関係づくり | 対人支援、カスタマーサクセス、育成 |
榊原立城は、16年の教員経験をコーチングの仕事に接続しています。やっていることは同じで、相手が子どもから大人に変わっただけという感覚だそうです(インタビュー)。免許が要る仕事ではありません。
この3つは、教育業界以外でも通用します。 むしろ、研修や育成の仕組みが弱い会社では、設計できる人が足りていません。
学校の外にどんな仕事があるのかは、中にいると本当に見えません。すでに外に出た元教員と話せる場所があります。
公務員コミュニティに参加する書き方を変える
職務経歴書に「中学校教諭一種免許状(社会)」とだけ書いても、何ができる人かは伝わりません。
- 何年、何人に、何を教えたか
- 授業以外に何を任されていたか(校務分掌、部活動、学年の運営)
- 自分が設計して変えたこと
この形にすると、教育以外の職種でも読めます。詳しくは教員の経験を、外の仕事の言葉に言い換えると教員から未経験の職種へにまとめました。
教育に近い仕事を選ぶときの注意
免許が活きる職種は、給与や働き方の条件が学校と大きく違う場合があります。塾・予備校は夜型の勤務になりやすく、非常勤は収入が不安定になりやすい。
選ぶ前に、次の3つを確認してください。
- 勤務時間帯(夜、土日の扱い)
- 雇用の形(常勤・非常勤・業務委託)
- 収入の変動(生徒数や講座数に連動するか)
「教えられる」という理由だけで選ぶと、働き方の条件で苦しくなることがあります。
新しい資格を取ろうか迷っている場合
用途が決まっていない資格は、時間とお金の割に効きません。先に「何をする人になるか」を決めてから選んでください(資格から入ると外れる。用途を決めてから選ぶ)。
教える対象を変えると、見える仕事が増える
教員の経験を「子どもに教える力」として閉じてしまうと、選べる仕事が学校の周辺だけになります。対象を変えて考えると、候補は一気に広がります。
- 相手を大人にする:企業研修、社内の教育担当、資格講座の講師、コーチング
- 相手を組織にする:業務マニュアルの設計、オンボーディングの仕組みづくり
- 相手を保護者・地域にする:子育て支援、地域の学習支援、相談業務
- 相手を教材にする:教材制作、編集、eラーニングのコンテンツ設計
どれも、授業設計と進行の力がそのまま効きます。「教える」を「相手が分かる状態を作る」と言い換えると、応募できる職種が見えてきます。
免許を使わない道を選んでも、戻れる
免許は、使わない期間があっても消えるものではありません(更新制の廃止により、2022年7月1日時点で有効だった免許状は引き続き有効として扱われます)。
つまり、いったん外に出て、合わなければ講師や採用試験で戻る、という形も取れます。 戻る道があると分かっているだけで、外に出る判断は軽くなります。
実際、民間を経験してから学校に戻った人もいます。外で得た視点が、戻ってからの仕事に効くこともある。一方通行だと思い込まないことが、この免許の扱い方でいちばん大事な点かもしれません。
免許を手放さずに、別の道を試す
免許を持っている強みは、戻る道を残したまま外を試せることです。会社員が一度辞めると同じ職には戻りにくいのに対し、免許があれば講師登録や採用試験という道が残ります。
だから、次のような進め方が取れます。
- 在職中に、外の仕事の情報を集める
- 退職し、別の職種で1〜2年働いてみる
- 合わなければ、講師として学校に戻る
この「戻れる」という前提を知らないまま、辞めるかどうかで何年も迷う人がいます。 免許の状態を確認するだけで、判断の重さが変わります。
もちろん、戻る場合の条件(採用の枠、勤務地、雇用の形)は自治体によって違います。選択肢として残っているかどうかを、事前に確認しておいてください。
学校の外から、教育に関わり続ける
学校を離れても、教育に関わる道はいくつもあります。
- 教材・コンテンツを作る側に回る
- 学習支援や居場所づくりのNPOに関わる
- 企業の人材育成で、大人に教える
- 教育行政の側から、仕組みを整える
教壇に立つことだけが教育ではない、と考えると、選択肢はかなり広がります。榊原立城も、いまはコーチングという形で、相手を大人に変えて同じことをしています(インタビュー)。
免許以外の資格を足すべきか
教育以外の職種を目指す場合、新しい資格を取るべきか迷う人がいます。判断の基準はひとつです。応募したい求人に、その資格が要件として書かれているかどうか。
書かれていなければ、優先度は下がります。教員の経験を言い換えるほうが、同じ時間で効きます(資格から入ると外れる。用途を決めてから選ぶ)。
まとめ
- 免許が必須の仕事は限られる。軸にすると選択肢が狭くなる
- 免許の有効性は、教育委員会で確認できる
- 外で効くのは、授業設計・進行・関係づくり
- 免許は「何年、誰に、何を教えたか」で書く
- 教育に近い職種は、勤務時間帯と雇用の形を先に確認する
よくある質問5選
質問1免許を持っていることは、転職で有利になりますか。
教育に関わる職種では説明が早くなります。それ以外では、免許そのものより経験の中身が見られます。
質問2講師や非常勤として働きながら準備できますか。
働き方の選択肢としてはあります。収入と時間のバランスを先に確認してください。
質問3学校に戻る道は残りますか。
免許が有効であれば、講師登録や採用試験の受験は可能です。更新制が廃止されたため、2022年7月1日時点で有効だった免許状は、旧制度の有効期限を過ぎていても有効なものとして扱われます。それ以前に失効している場合は取り扱いが異なるので、教育委員会でご確認ください。
質問4塾や予備校では免許が必要ですか。
必須ではないことが多いですが、教壇経験があると採用の説明が早くなります。
質問5日本語教師には免許が使えますか。
別の資格・登録が必要です。ただし、教えた経験そのものは評価されます。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
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