副業の許可を申請するとき、何を確認してから出すか
申請の前に読むのは法律ではなく所属の規程です。許可が要る行為の判断、書く内容、国家公務員と地方公務員の違い、通らなかったときに取れる手までまとめました。
この記事の要点
- 申請の可否は、法律の条文ではなく所属の規程と運用で決まる部分が大きい
- 出す前に確認するのは、対象になる行為か・様式は何か・誰の許可が要るかの3つ
- 地方公務員は任命権者の許可、国家公務員は国公法に基づく承認・許可で経路が違う
- 許可を得ても、職務専念義務と信用失墜行為の禁止は常にかかっている
- 通らなかった場合も、条件や勤務形態を変えるという手が残る
許可の基準・様式・手続きは、所属する自治体・府省ごとに異なり、改正もあります。この記事は2026年9月時点の一般的な整理です。可否の判断は必ず所属の規程と人事担当でご確認ください。
副業の許可について調べると、法律の条文が出てきます。条文は前提として要りますが、実際の可否を決めるのは、所属の規程と運用です。同じ地方公務員でも、自治体によって基準は違います。
この記事では、出す前に確認することと、書く内容、そして通らなかったときの手を書きます。
出す前に確認する3つ
① 自分の行為が、そもそも対象か
許可が要るのは、営利企業への従事や自営に当たる行為です。学ぶこと、話を聞くこと、経験を書き出すことは、これに当たりません。対象外のことに申請しようとして止まっている場合があります。
線引きの全体像は公務員が適法な範囲でできる準備は、どこまでかにまとめました。
② 様式と、誰の許可か
庁内ポータルに様式があることが多いはずです。地方公務員は任命権者の許可(地方公務員法第38条)、国家公務員は国家公務員法第103条・第104条に基づく承認や許可で、窓口も様式も違います。提出先と決裁の流れを先に確認してください。
公立学校の教員には、教育公務員特例法第17条の定めもあります。教育に関する職との兼職・兼業は、一般の職員とは別に扱われることがあります。
③ 書く内容
一般に求められるのは、次のような項目です。
| 項目 | 見られる点 |
|---|---|
| 活動の内容 | 職務との関係、利害関係の有無 |
| 従事する時間帯 | 勤務時間と重ならないか |
| 報酬の有無と額 | 基準の範囲に収まるか |
| 相手方 | 所属の職務と関係のある団体でないか |
| 期間 | 継続か単発か |
書きにくいのは「活動の内容」です。 曖昧に書くと確認のやり取りが増えます。何を、誰に、どのくらいの頻度で提供するのかを、具体的に書いてください。
許可を得ても、他の義務は残る
許可は「営利企業への従事の制限」を通すためのものです。職務に専念する義務、信用失墜行為の禁止、秘密を守る義務は、許可の有無にかかわらずかかっています。
- 勤務時間中にその活動をしない
- 職務上知り得た情報を使わない
- 所属が特定される形で発信しない
このあたりは、許可が下りたあとに問題になりやすい部分です。許可は免罪符ではない、と考えておいてください。
申請の様式や通り方は、自治体ごとに差があります。実際に出した人、通らなかった人の話を聞ける場所があります。
公務員コミュニティに参加する通らなかったときに、勤務形態を変えるという手がある
町役場の職員だったSHUNさんは、正職員のまま副業で試したいと人事課長に何度も相談しましたが、許可は下りませんでした。取り付く島もなかった、と本人は話しています。
そこで取ったのが、パートタイムの会計年度任用職員に切り替えるという手です。パートタイムの会計年度任用職員は、地方公務員法第38条の営利企業への従事の制限の対象外になります。その立場で1年間試してから、独立しています(インタビュー)。
収入も身分も変わる選択なので、誰にでも勧められる形ではありません。勤務形態や兼業の扱いは自治体ごとに定めが違うので、同じ形が取れるかどうかは必ず所属で確認してください。
不許可だったときに確かめること
不許可の通知が来たら、次を確認してください。
- 理由:どの要件を満たしていないのか
- 変えられる部分:時間帯、報酬の有無、相手方、頻度
- 再申請の可否:内容を変えれば出し直せるのか
- 期間を区切れば可能か:短期・単発なら認められる場合がある
「公務員だから無理」で終わらせないこと。 実際には、内容の一部を変えれば要件を満たす場合があります。
聞きにくいときの進め方
人事担当に聞くこと自体をためらう人は多いのですが、制度の一般的な確認は、辞める意思の表明ではありません。それでも気になる場合は、順番を変えます。
- まず規程を自分で読む
- 同じ職場で許可を得ている人の例を探す
- 許可が不要な範囲の準備を先に進める
- 実際に必要になった段階で申請する
準備の順番は辞める前に何をしておくかに、職場の外のつながりの作り方は職場以外のつながりを、在職中に作るにあります。
申請の前に、自分で確かめられること
人事担当に聞く前に、自分で確認できることがあります。ここを済ませておくと、聞く内容が具体的になり、やり取りが短くなります。
1|庁内ポータルの規程です
「営利企業への従事等の制限」「兼業」「副業」などの語で探すと、要綱や様式が見つかることがあります。
2|公表されている自治体の基準です
地域活動や公益的な活動について、許可の基準を公表している自治体があります。自分の所属になくても、考え方の参考になります。
3|過去の事例です
同じ職場で許可を得ている人がいれば、どういう内容だったかを聞けます。名前を出さずに「こういう形は通りますか」と人事に聞く方法もあります。
書類が通りやすい書き方
申請書で確認されるのは、職務との関係と、勤務への影響です。その2点が読み取れる書き方にしてください。
- 活動の内容を、抽象的な言葉で書かない(「支援」ではなく「月2回、◯◯について説明する」)
- 時間帯を明記する(勤務時間外であることが分かるように)
- 相手方が職務と利害関係にないことを書く
- 報酬の有無と、額の見込みを正確に書く
曖昧に書くと、確認のやり取りが増えます。 具体的に書いたほうが、結果的に早く通ります。
制度が変わる可能性
副業・兼業の扱いは、近年見直しが進んでいる分野です。国の基準が見直され、それに合わせて自治体の運用が変わることもあります。
SHUNさんも、国家公務員の承認基準が見直されたというニュースを見て、「正職員のまま副業で試す」ことが将来できるようになるかもしれないと話しています(インタビュー)。
つまり、いま不許可でも、数年後に状況が変わることがあります。 一度断られたからといって、その分野を諦める必要はありません。年に一度は規程を確認しておくと、変化に気づけます。
申請しないまま準備を進める場合
許可の対象になる行為をしないのであれば、申請は要りません。多くの人にとって、準備の大半はこの範囲に収まります。
学ぶ、話を聞く、経験を書き出す、売らずに作ってみる。ここまでは報酬が発生しないので、許可の話になりません(公務員が適法な範囲でできる準備は、どこまでか)。
申請が必要になるのは、実際に対価を得る段階からです。 それまでは、規程を読んでおくだけで足ります。
まとめ
- 申請の前に、対象になる行為かどうかを確かめる
- 様式と許可権者は、地方公務員と国家公務員で違う
- 活動の内容は具体的に書く。曖昧だとやり取りが増える
- 許可を得ても、職務専念義務などは残る
- 通らなくても終わりではない。条件や勤務形態を変える手がある
独立を視野に入れている場合は公務員を辞めてフリーランスになるとき、先に決めることも読んでください。
よくある質問5選
質問1申請は、どの段階で必要になりますか。
許可の対象になる行為に着手する段階です。それ以前の準備(学ぶ、話を聞く、書き出す)には許可が要らないため、対象になる段階で申請する形になります。
質問2申請が通らなかったらどうなりますか。
不許可の理由を確認してください。内容の一部(時間帯、報酬の有無、関係先)を変えると要件を満たす場合があります。勤務形態そのものを変えるという手もあります。
質問3無報酬の地域活動でも申請は要りますか。
取り扱いは所属によって異なります。無報酬でも届出を求める規程があるため、必ず確認してください。
質問4申請したことは人事評価に影響しますか。
制度に基づく手続きなので、それ自体が評価を下げるものではありません。気になる場合は、まず一般的な制度の確認として聞く方法があります。
質問5許可を得たあとに内容が変わったら。
変更の届出が必要になることがあります。時間帯、相手方、報酬の額が変わる場合は、事前に確認してください。
榊原立城(さかきばら もとき)元公立中学校 教員(16年)/現キャリアコーチ
コラムは主宰が内容を確認したうえで公開しています。制度や法令に触れる記述は、公開時点の条文と所属の規程を確認したうえで書いています。